北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


動物写真家 富士元寿彦さん(69)

サロベツ原野を拠点に半世紀*「幻の鳥」ぜひ撮りたい

 【幌延】町内在住の写真家富士元寿彦さん(69)は、幌延、豊富両町にまたがるサロベツ原野を中心に野生動物を半世紀にわたり撮り続けている。エゾユキウサギ、モモンガ、オジロワシ、オオワシなど、これまでカメラに収めた動物は300種類以上に上るという。動物写真への思いやサロベツ原野の魅力などを聞いた。(聞き手・天塩支局 田中雅章)
 
――50年間の撮影活動を振り返っていかがですか。

 「高校を卒業した18歳の時から動物の写真を撮り始めました。これまで本当に面白かった。私が撮影の拠点にしているサロベツ原野では、北海道に生息している野鳥のほとんどを見ることができます。ただ、振り返ると、時間をかけても撮れなかったことのほうが多かったですね」

――動物写真を撮り始めたきっかけを教えてください。

 「大学受験に失敗し、父親が『気分転換に』とカメラを買ってくれたことがきっかけです。子どもの頃から動物が好きでした。酪農家の父親と12歳上の兄が、有害鳥獣駆除のため、キツネやクマの猟をしていました。私は小学校5、6年のころから高校まで、冬休みなどに父たちに連れられ、野山を歩きました。この経験と猟師用の図鑑を繰り返し読んだことで、動物の足跡や習性がわかるようになり、撮影に生きています」

――撮影で心がけていることはありますか。

 「私のモットーは『粘れば撮れる』です。生態をよく知った上で写すようにしています。動物はそれぞれ個体差があり、撮影するたびに表情が違うなど新たな発見があります。それが楽しい。同じ写真を2度と撮影することはできません。多くの人に動物それぞれが持つ魅力を伝えたい。年齢を重ねるごとに、私の経験や撮影の仕方を次の世代に伝えたいと思うようになりました」

――これまで印象に残っている動物は。

 「エゾユキウサギです。一番好きな動物で、約40年間追い続けています。知名度が高い半面、知られていないことが多いからです。7、8年前、世界で初めて鳴き声が入った動画の撮影に成功し、全国放送のテレビで放映されたこともありました」

――今後、撮りたい動物は。

 「最近は天塩川水系を中心にカワセミの撮影に力を入れています。今後、撮りたいのは、ソデグロヅルとワシミミズクです。サロベツ原野では、いずれも10年ほど前に目撃されたのが最後です。私も10年前にワシミミズクを1度だけ目にしましたが、撮影できませんでした。ともに幻の鳥といわれており、ぜひ撮りたいですね」
 
*取材後記
 「撮影に出なかったら落ち着かない」。1年を通してほぼ毎日、動物を探し求めてサロベツ原野や近郊に足を運ぶ。いまは日帰りだが、以前は食料と水、テントを持ってサロベツ原野で1週間以上、お目当ての動物たちを追い続けたこともあったという。「若い時に比べたら体力は落ちた」と語るが、動物への深い愛情と、新たな一枚への熱い思いはいまも尽きない。
 
 ふじもと・としひこ 1953年、幌延町生まれ。天塩高卒。2023年2月末まで町内の金田心象書道美術館内のモニターで冬の動物写真約100枚を上映中。著書や写真集は「エゾユキウサギ 跳ねる」「北海道サロベツ原野 鳥たちの365日」(ともに北海道新聞社)など28冊に上る。
 
(2022年12月19日掲載)
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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