北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


藤沢隆史(礼文町教委主任学芸員)*氷河期の贈りもの

 自然豊かな礼文島を代表するもの。それは西海岸を中心に生育するさまざまな高山植物です。高山植物はその名の通り高山の頂上付近、あるいは非常に寒い場所に育つ植物です。島には高い山がなく、気候もそれほど寒くないですが多くの高山植物が見られます。それは島の気候と地質に由来する特徴が一般的な植物の生育にとって不利な環境を作り出しているからです。

 現在の日本列島に見られる高山植物は最終氷河期に大陸から広がってきたもので、その後、温暖化により生育地を変えながら、結果的に高山や寒冷地、あるいは特殊な環境を持つ場所に残ったものです。

 礼文島でも大陸とつながっていた氷河期に広がってきた高山植物は温暖化によって一般的な植物が繁茂していくなか、西海岸の厳しい環境下にその生育地を求めていきました。周囲と切り離され、島になったことが固有種や隔離分布種が増える要因にもなりました。

 北海道指定の天然記念物である桃岩周辺の高山植物が国指定の天然記念物になることが確実となりました。日本列島の北端にありながら南方系の植物要素が高いことや、希少種が多く群落が多彩であることなどが評価されたものです。

 この貴重な贈り物をどのように守り、その魅力を伝えていくのか、改めて考えてみたいと思います。

 

(2022年3月7日掲載)

 
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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