北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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サラリーマンのつぶやき

サラリーマンが、ぼそっとつぶやきます。


サラリーマンのつぶやき 49言目

定年がそろそろ見えてきた今日この頃。社会人として戒めとなった思い出があります。

新人なりに一生懸命営業活動をしていたある日、お客様の中に気難しい方がおり、しかも営業成績のためにその人を取り込まなければならず、飲食接待にこぎつけました。

食事をしてスナックに行くと、泥酔されたそのお客様が店の女性に嫌がらせを始めたので、見かねた私がもう帰りましょうと促すと突然、「なんで小僧に指示されにゃならんのだ!」と激高され、ボトルに入ったウィスキーを頭からかけられました。一瞬何が起きたのか分からなかったのですが、私は次の瞬間こぶしを握り締め、殴る勢いでした。

 

店のママが私の腕を押さえ、耳元で「やったらすべて終わり。私にまかせなさい」と小声で言いました。ママはその人に向かい、「若気の至り、私が説教しておきますから。

お酒がもったいないですよ」とたしなめました。場は収まり、タクシーに乗せてお見送り。店に戻るとママは「あれでいいの。悪いのはあの人だけど殴ったらあなたが悪くなる。理不尽かもしれないけど、それが仕事であり社会というもの」と言われました。

 

部屋に戻り、ウィスキーの匂いがしみ込んだスーツを見ながら、何故か涙が込み上げてきたことを今でも忘れられません。

でも、あの経験があったから、今の自分があり、33年たっても自分の礎となっています。

 

あの時のスーツは今でも実家のタンスに入っています。

もちろん、サイズは合いませんけど。

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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