北極星
道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら
奥野真人(焼尻・ゲストハウス経営)*7月の長い夜
7月の3連休前の金曜夜、仕事を終えて寝室に行くと、愛猫のビスケに突如異変が起きていた。うなるような鳴き声を上げ、後ろ足を動かせなくなっていた。慌てて夜間診療をしている動物病院に電話をしたところ、「肉球が冷たくなっているならば、血栓症ではないか」との回答を得た。触ってみると確かに肉球から体温を感じなかった。
調べるうち、血栓症は一刻を争うと知った。しかし、ここは焼尻島。動物病院は島内になく、羽幌町内にもない。本土なら車を走らせるが、定期船は翌朝10時5分発だ。痛みでうなり、呼吸も早くなるビスケを前に何もできない僕たち夫婦。翌朝は6時からウニ漁、ゲストハウスも満室で忙しい。だけど寝るにも寝られず、無力さを痛感した。
幸いなことにビスケは耐えてくれた。僕は仲間に事情を伝え、短時間だけ漁に出てから定期船に乗り、旭川の動物病院へ急いだ。妻はゲストハウスを切り盛りし、島の人たちのご厚意にも支えられ、なんとかその日を乗り越え、ビスケも無事に一命を取りとめた。
望んで島に移住し、ここで保護したビスケと暮らしてきた。ビスケは今も入院中で治療を続けている。島には他では得られない魅力がある一方で、命に関わる場面では、ただ船を待つしかない時がある。その現実を改めて思い知った。
(2026年08月10日掲載)
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