北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


國枝保幸(市立稚内病院長)*子供の頃のある出来事

 私が小学校1年生の時の話です。わが家の3軒隣に本屋があり、そこの息子2人は年齢が近く私の遊び仲間でした。入り口には飼い犬が鎖でつながれ、私たちが横をすり抜けて店の中に入って行くたびにほえました。小型犬でかむわけでもないので、怖いと思ったことはありませんでした。

 ある日、3人で店の中に駆け込むと、奥で店の主人、つまり遊び仲間の父親が小柄な男に何やら文句を言われていました。仕方なさそうに主人がうなずくと、男は鎖を持ち犬を連れて出て行きます。私たちは後を追いました。

 近くの空き地に着くと、手下風の男が鎖を短く持って犬が逃げないよう命じられていました。小柄な男は落ちていた角材を手にし、犬を何度も打ち付け始めました。けたたましい鳴き声が空き地中に響きます。

 私たちは瞬きもせずその光景を見ていました。頭の中は怒りでも、恐怖、悲しみでもなく、無だったと思います。やがて静寂が訪れ、男たちが立ち去ると、私たちは犬の元に駆け寄りむくろとなったその姿を見つめていました。そこで私の記憶は終わります。

 男たちが何者だったのかは今でも分かりません。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻でジェノサイドの報道がなされるたびに、子供のころの出来事が脳裏によみがえってきます。

(2024年04月08日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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