北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


柴田えみ子(旭川・尊厳死協会道支部会員)*ギフト

 「バタバタとシバタ先生走り出す」と、私を川柳に詠んだ人がいた。

 「走り出しこけて転んでまた走る」。下手な返答をして笑ったが数年前の私は周囲から「バタバタシバタ」と呼ばれまさにそんな生き方をしていた。講演活動や新聞連載、写真の個展、お笑い寸劇ぴんころ劇団の活動と台本書き、高齢者宅ボランティア、認知症グループホームの外部調査の仕事とすさまじい日常だった。それが夫婦で大病を患ったのを機にがらりと変わった。夫は会社を辞め、私も二人でやってきた認知症グループホームの外部調査の仕事以外全てを辞めた。多くの人と関わり充実した日々だったが病気でもしない限り私のバタバタは収まらなかったに違いない。

 退院後の静かな生活はとても新鮮だった。わが家は豊かな自然に囲まれているにもかかわらず私は鳥の名前も花の名前も知らない。好きな絵を描くことも、音楽に親しむことも隙間時間では満足にできなかった。今は小鳥の声や小川のせせらぎに耳を澄ませ、スマホで野の花の名前を調べる。ギターのチューニングも先日済ませた。77歳。病気から大きなギフトをもらった。「バタバタシバタ」を返上した先に、こんなわくわくした世界が待っていたとは。

 いま私は、自然を友として自分の歩幅でゆっくり歩む幸せをかみしめている。

(2024年04月01日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


GO TOP