北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


柴田えみ子(旭川・地域密着型サービス外部評価調査員)*心の時代

 私が独居高齢者宅のボランティアで、庭木の選定をしていた時、通りかかった母親が小学生の子供に「ちゃんと勉強しないと、あんな汚い仕事しかできなくなるよ」と話すのが聞こえた。

 この日私は午前中に尊厳死の講演をし、そのまま駆け付けたため、車の中で作業着に着替えた。使い古し、洗っても染みの落ちない作業着で木の根元にはいつくばる姿は、確かにきれいとは言えない。職業に貴賤(きせん)無しというが、見かけでの差別はやはり今もあるのだ。

 団塊世代の私は、地位やお金、学歴、名誉が何より重視される時代を生きた。ステータスが高く、どれだけたくさん人より持つかが人としての価値だったのだ。物質文明のそんな価値観が戦後の復興に一役買ったのは否めない。

 が、その一方で心をないがしろにし、先の母親のように差別意識を生んだのも事実だ。金子みすゞさんの「星とたんぽぽ」という詩には、「見えぬけれどもあるんだよ」「見えぬものでもあるんだよ」という言葉がある。

 私たちは外見を気にし、ものにこだわるが、自分の心は汚れていようが散らかっていようが放置してしまいやすい。これからは物質一辺倒の考えから脱却し、心の在り方を大切にする時代になってほしい。もの思う秋に自戒を込めてつづってみた。

(2025年10月13日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


GO TOP