北極星
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奥田修一(中富良野・北海道風景画館主宰、画家)*風を描く
紅葉がちらほらと散り始め、最後に落葉松の細い葉が、揺れながら風に流されるといよいよ雪が来ると知らせてくれる。そういう目に見える風の現象ばかりではなく、風景画家にとって風を描くという言葉の意味するところは時間を描くという事である。
風は時間のない3次元の世界には吹かない。画家が風を描きたいと言うのは時間軸を含む4次元の世界を描きたいと言うことである。例えば本を読むと本の時空、つまり4次元の世界に心が遊ぶことになる。
絵も同様、心を遊ばすためには時間の流れている時空が必要で、それを画家が風を描きたいと言うのである。別の言い方をすれば形ではなく動きを描くのである。形を描くと動きは止まる。つまり4次元ではなく3次元になりやすいのである。
ゴッホは「手の形を描くのではない。手の動きを描くのだ」と言った。確かに彼の画は風景画においても線描で糸杉などの樹の持つ動き(生命感)を描いているし、麦畑を描いても、天空を描いても同様である。
「タッチとは不思議なものだ」と彼は語ったが、それは人の心を引き込む力があるという意味であろう。そして、そのタッチとは4次元の時空を開く、つまり風を描く手法だと言えよう。われわれの心も4次元の世界をつかの間漂い雲散霧消していく。そうして人生もまたしかりである。
(2025年10月27日掲載)
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