北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


シロフクロウ*雪に溶け込む「鏡もち」


 
 「シロフクロウはどこにいるの?」。雪の中、シロフクロウ舎前で、真っ白な3歳の雄を探す来園者の声がする。丸い鏡もちのような姿で雪景色に溶け込むが、薄目を開け、首を回して、周囲の警戒を怠らない。リラックス時は、ふっくらした餅のよう。しかし、驚いたり緊張したりすると、もちがしぼむように羽毛の膨らみがなくなり、半分ほどの細さになる。

 野生では、繁殖期は北極圏のツンドラ地帯に暮らす。冬は南下し、日本でも見られる。白夜地帯が生息域のため、フクロウの仲間では珍しく日中に活動する。性別は、真っ白な雄に対し、雌には体の横じま模様があり、違いが分かりやすい。
 1羽だけ展示する雄は、おびひろ動物園(帯広市)で2019年に生まれた個体で21年に来園した。22年は久しぶりの繁殖を目指して静岡市立日本平動物園から来た雌も同居していた。

 地面の砂にくぼみを作って外敵の目を避けて卵を産む習性があるが、ドーム状のシロフクロウ舎は通路の真ん中に位置して人目につく。担当飼育員の大内章広さん(38)は「隠れられて、雨風もしのげ、卵を守れるような環境が必要」と、板や目の細かい網を張って目隠しを作ったり、止まり木の丸太を並べたりして、死角となるエリアを設ける工夫を凝らした。

 このカップルは春の同居開始時は距離を置いていたが、隣り合って止まるなど仲良くなったようだった。大内さんは「繁殖行動を見せられる」と考えたが、この雌は体調を崩してバックヤードに戻すことになった。

 シロフクロウは映画「ハリーポッター」にも主人公の相棒として登場し、人気を呼んだ。人間と同じように目が顔の正面にある「両眼視」。空間の奥行きは分かるが視野が狭く、野生下では耳を頼りに餌を探す。人気の理由について「顔つきが人間に近く、親近感が湧くのでしょう」と大内さんは説明する。

 幸福を呼ぶとも言われるフクロウ。旭山の銀世界に溶け込むシロフクロウを見つけられたら、2023年は幸福が訪れるかもしれない。(鳥潟かれん)
 
【写真説明】雪の中、じっとたたずむシロフクロウの雄(宮永春希撮影)
(2023年1月9日掲載)
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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