北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


漢幸雄(士別・劇場館長)*帰りなん、いざ

 三十数年ぶりで小中学校の同期会を開催した。それぞれが年輪を重ねた顔つきで出席してくれたが、見かけの変貌ぶりには互いに驚くばかり。在学途中に転出した人も参加してくれたのだが、久しぶりの故郷の風景は彼らの記憶とは大きく異なっていて戸惑ったに違いない。マチも人も変わっていく。

 子どもたちは地元にはいなくなり、医療や介護が必要となれば住み慣れた場所から便利な都市部への転出が珍しくなくなった。なんとなく終(つい)の棲家(すみか)と思っていた場所が、自分の意思とは別な事情で変えられてしまう。そして自分の意思だけでは戻れなくなる。

 それでもここに住み続ける私たちはいる。ここが幸せなマチであるかはわからない。事情もさまざまだが、今現在はここにいることができている。いつかは私も年を重ねてこの地を離れる日が来るのだろうか。それともこのマチは病を得て身体の不調を抱えながらも住み続けられる場所であってくれるのだろうか。

 国を追われ彷徨(さまよ)う人々がいる。故国が安堵(あんど)して暮らせるならば帰りたいのは当然だろう。どこの誰にとっても、どのように暮らしていてもいつかは故郷に帰りたいと思い、願う日は来るのではないか。理由はない。それが故郷だから。

 帰りなん、いざ。その故郷が荒れ果てていても。

(2025年12月01日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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