旭山動物園わくわく日記
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ゴマフアザラシの「ゆき」*知床で保護 体重増え回復
あざらし館の屋外プールで、ひょっこりと水面から顔を出し、来園者の注目を浴びるのはゴマフアザラシの「ゆき」(雌、0歳)。6月中旬に知床からやってきた野生の個体だ。飼育担当の副園長中田真一さん(56)が、魚をゆきに与えた後、手のひらを差し出すと鼻でタッチ。少しずつ動物園の暮らしにも慣れてきたようだ。
ゆきは4月、オホーツク管内斜里町の知布泊(ちっぷどまり)漁港の斜路に打ち上げられているところを地元住民らに発見され、野生動物の保護を行う公益財団法人「知床財団」(斜里町)に保護された。右目に大きな腫れがあり、左脇腹をけがしていた。呼吸も荒く、ひどくやせていたが、1カ月半の治療の末に一命を取り留めることができた。
アザラシの多くは5月から11月ごろまでオホーツク海やベーリング海で過ごすが、流氷の南下とともに北海道の沿岸にやってきて、雌は氷上などで3月ごろ出産する。中田さんは「近年、北海道はゴマフアザラシがやってくる南限です」と説明する。
ゴマフアザラシは、生後1、2週間で離乳して間もなく、親元を離れる。知床では、親離れ後にうまく魚を獲ることができずに保護されるケースが多い。ゆきもそうした1頭だ。同財団は当初、野生に返すことを目標に飼育していたが、秋に漁期を迎えるサケの定置網漁の網に入り込んで死ぬ可能性があると判断した。旭山動物園と協議した結果、旭川行きが決まった。
現在、ゆきは仕切られたプールで1頭だけで暮らす。1日4回、合わせて2・6キロのホッケやオオナゴを食べ、1カ月ほどで体が一回り大きくなった。7月中にも、他の4頭のゴマフアザラシと同じプールに入り、合流する予定。昨年12月に稚内市ノシャップ寒流水族館からやってきたラッキー(雄、5歳)との繁殖にも期待がかかる。
アザラシはかわいらしい姿が愛される一方、網に入って魚を食い荒らすなど漁業者を悩ます存在でもある。中田さんは「ゆきを通じて、人とアザラシの共生について考えてもらいたい」と話す。
(渡辺愛梨)
(2023年7月17日掲載)
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