北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


産前・産後ヘルパー「あ~ちゃんの手」運営 川原章子さん(62)

*家事や育児を10分100円でお手伝い*親の負担軽減 心に余裕

 妊婦や1歳未満の乳児がいる家庭を対象に、家事や育児を10分100円で手伝う旭川市の産前・産後ヘルパー「あ~ちゃんの手」が、18日で活動4年を迎えた。元保育士で5人の子を育てた川原章子さん(62)が、親からの急な「ヘルプ」に自宅のある同市江丹別から車で駆けつける。「親の負担を軽減し、産後うつや虐待を減らしたい」と頑張る川原さんに思いを聞いた。(聞き手・旭川報道部 若林彩、写真・諸橋弘平)

 ――始めたきっかけと活動内容を教えてください。

 「新潟県上越市に住む長女から、妊娠中に市の産前・産後ヘルパー事業を使った話を聞き、2018年に始めました。困っている人に手が届くように、料金は交通費込みの10分100円。掃除や洗濯、調理といった家事から、乳児のおむつ交換や食事介助、上の子の世話まで、親からの『してほしい』に応えています」

 ――実際に始めて、どうでしたか。

 「産院にパンフレットを置いて回り、半年後に初めて3人の子がいる母親が利用してくれました。何度か訪ねた後、夜に急に電話があり、駆けつけると真ん中の子が嘔吐(おうと)物でシーツや枕カバーを汚してしまい、お母さんがぐずる子どもたちを前に困っていた。私が洗ってあげると、お母さんは泣きながら『頼んで良かった』と言ってくれたんです。これが私がしたかったことだと強く思いました」

 ――他にどんな家庭を支援してきましたか。

 「母親がネグレクト(育児放棄)の家庭に泊まって子どもを世話したこともあったし、義父の介護に追われた妊婦の家で食事を作ったり、上の子の保育園の送り迎えをしたこともありました。いつも子どもにいらいらしている母親は、掃除をしてあげると心に余裕ができたように見えました」

 ――どのような声を掛けていますか。

 「『私の子育ても同じだったよ』と伝えています。保育士だったこともあり、子どもの声を聞かず、自分の正しいと思った育児を押しつけていました。子育てをやり直せるなら、最初からやり直したい。今は赤ちゃんが何を言いたいのか聞くことを大切にしています。子どもが見ている物、触っている物に焦点を合わせ、子どもの心を代弁してあげれば、おのずと子どもとの付き合い方が分かります」

 ――親たちに伝えたいことはありますか。

 「スマートフォンの中の答えと比べず、外に出掛けて生の情報に触れてほしいです。ちょっと風穴が開けば、虐待や産後うつにならないこともある。実家のおばあちゃんの手を借りるようにお手伝いさん感覚で使ってほしいし、いつか本当に困ったときに思い出してもらえればうれしいです」

 

*取材後記

 写真で川原さんに抱かれるのは生後5カ月の伊豆倉楓(かえで)ちゃん。1月から利用する母親の梢さん(40)は「赤ちゃんとの遊び方の勉強になる」と話す。旭川市は2020年に妊婦と1歳未満の子がいる親向けに「産前・産後ヘルパー事業」を始め、あ~ちゃんの手を含む5事業所のサービスを2時間500円で利用できるよう助成している。子育て経験のあるヘルパーも多く、気軽に利用してほしい。

 

 かわはら・しょうこ 

 真宗大谷派の僧侶でもあり、実家の泰厳寺の保育所で働き、ヘルパーやケアマネジャーも経験。「お年寄りから学んだ知恵が今生きている」。写真撮影時のみマスクを外してもらった。「あ~ちゃんの手」は(電)090・6446・9034へ。

 

(2022年4月18日掲載)

 
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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