北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


モモイロペリカン*キリンと同居 互いに刺激

 アミメキリンの親子を、さまざまな角度から観察できて人気のきりん舎。雄のゲンキが長い足でゆっくり歩くと、来園した家族連れから歓声が上がる。その片隅、白い羽にくちばしをうずめ、マイペースで休む鳥がいる。モモイロペリカンだ。

 ペリカンが旭山動物園にやって来たのは約20年前。初めはゾウと暮らしたが、ゾウが死んできりん舎に来た。違う動物を同じ場所で展示し、本来の野生の姿を引き出す「共生展示」の一つで、11月3日までの夏季開園中、屋外で見ることができる。

 「ペリカンには不思議な存在感がある。来園者からは『どうしてここにいるの』と聞かれる」と担当飼育員の佐藤伸高さん(37)。生息地は同じアフリカだが、餌となるものは異なる。「動物は餌になるかどうかという以外、好き嫌いという価値観は持っていない」(佐藤さん)ため、干渉することはない。一定の距離を保って暮らす中で、水浴びや息づかいなど、互いの動作が刺激になる。共生展示には、双方の「心の健康」(同)を改善する狙いもある。

 キリンの子、あさひが昨年12月に生まれたことで、関係性が変わらないか心配もあったが、「あさひの母親の結がペリカンを気にしていないのを見たからか、過敏な反応はなかった」と佐藤さんは安堵(あんど)する。

 背の高いキリンに比べれば、ペリカンは注目されにくいものの、特別な思いを抱くファンもいる。旭川市の柴田えみ子さん(74)はペリカン来園と同じ頃、札幌から旭川に引っ越し、月1回来園するとペリカンへのあいさつを欠かさない。「一緒に年を重ねてきたから、かわいくて。これからも見守りたい」

 餌のホッケを食べたり、羽ばたいたりする姿で来園者を楽しませるペリカン。暑い日には、特徴的な喉袋を振るわせる。体温を下げるためだ。そして夕方になり、キリンが屋内に姿を消すと、ペリカンは屋外を、わが物顔で歩き始めるという。
(望月悠希)

 

【写真説明】キリンと一緒に暮らすモモイロペリカン(宮永春希撮影)
(2021年10月17日掲載)

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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