北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


種の保存 役割の一つ*命守り次世代に伝える


 

 動物園には、「種の保存」「教育・環境教育」「調査・研究」「レクリエーション」という四つの役割があるとされています。中でも私たち飼育担当者が最も大きく関わっているのが、「種の保存」です。

 それぞれの担当動物は、とても希少であったり、地元ではよく見かける動物であったりしますが、どの動物も同じ大切な命です。その命を守り、次の世代に伝えていくには、動物園で繁殖させて数を維持、または増やしていかなければなりません。

 ただ増やせばいいというだけではなく、その動物たちが健康に生活していく環境づくりも、飼育担当者の大事な仕事です。

 環境づくりで動物園と野生下の大きな違いは、飼育スペースに限りがあることです。また、その動物の社会性もあり、単独で生活する動物と群れで生活する動物の違いや、血縁関係などさまざまな問題が出てきます。

 動物園の場合、同じ動物を飼育している他の動物園と、繁殖のため動物の入れ替えなどをして血縁に注意していますが、それにも限りがあります。そこで繁殖を制限します。

 その手法はいくつかありますが、去勢・避妊という手段を取ってしまうと、繁殖ができなくなってしまうので、単純にオスとメスを隔離する方法が一般的です。私が担当する「エゾシカの森」では、繁殖制限のためオスとメスを隔離しています。

 現在、旭山動物園のエゾシカの森ではオス4頭、メス3頭の計7頭を飼育していますが、一つの放飼場で7頭が生活するには、スペース的に少し余裕がない状態となっています。

 飼育中の個体はオス、メス共に高齢から若い個体まで年齢に幅があるので、いざという時には同居させ、再度繁殖させることも可能です。ただ、前述したように血縁の問題も出てきますので、その部分も考慮して繁殖を計画しています。

 動物のかわいい赤ちゃんを見たいという方も多いと思いますが、動物たちの現状やタイミングによって繁殖を行っておりますので、長い目で見守っていただけるとうれしいです。
(エゾシカ担当 畠山淳)

 

【写真説明】「エゾシカの森」のエゾシカ。オスとメスを隔離して飼育している
(2021年8月8日掲載)

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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