北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


動物だって歯は命*ヒトの口腔ケア応用へ研究

 私事ですが先日、奥歯を抜歯しました。昔治療した歯の歯根近くにひびが入り、そこが原因となり歯根の先端が病気になってしまいました。顎の骨にも影響があり、抜歯以外の選択肢がありませんでした。奥歯が1本ないだけでこんなにも食事がしづらいものかと、改めて歯の大切さに気付きました。
 ヒトであれば虫歯や歯周病になれば歯医者さんに診てもらい、できるだけ歯を残してもらえるように処置してもらえますが、野生動物はどうでしょうか。たとえばオオカミなどの肉食動物は上下の奥歯の一部が鋭くとがっており、かみ合わせるとハサミのように肉を切ることができます。この歯は食べる上で非常に重要で、大きく欠損したり、抜けたりすると、飢えて死ぬといわれています。野生の動物たちにとって、歯は命です。
 動物園で多い歯のトラブルの一つが加齢による歯の摩耗。その場合は飼育係が餌を細かく切る、ゆでてやわらかくするなど食べやすいようにケアします。
 しかしこれが虫歯や重度の歯周病となると、動物園では設備や専門技術の不足によりヒトと同等の治療をするのは難しくなります。そもそも口腔(こうくう)内を細かくチェックすることが困難なため、飼育係が異変に気がついた時には、もう抜歯するしかないほど病状が進行していることが多いのです。
 そこで重要になってくるのが簡易的な口腔内チェックと予防ケアです。虫歯も歯周病もごく初期の段階で発見できれば、治療せずにセルフケアで治癒することができます。
 現在、動物園では歯科医の先生とともに、オランウータンを対象にヒト用口腔内簡易検査が応用できるか、またフッ素塗布やブラッシングなどのケアにより口腔内環境が改善されるかなど歯に関わる研究をしています。ヒトと同様に動物園の動物たちも高齢化が進むと考えられます。動物たちがいつまでも健康でいられるように、お口の管理に努めたいと思います。(飼育スタッフ 佐橋智弘)
【写真説明】歯は命。オランウータンでヒト用口腔内簡易検査が応用できるか研究が進む
(2020年6月1日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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