北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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まちぶら!道北散歩

旭川や近郊エリアを気ままに訪ね、 地域の魅力を再発見していく『まちぶら!道北散歩』。 歴史や文化、人など、地域に根付いた宝物を紹介します!


第3回 中原悌二郎記念 旭川市彫刻美術館

アートと歴史が詰まった 「彫刻のまち旭川」の出発点

みなさん、こんにちは。今回は旭川市春光にある「中原悌二郎記念 旭川市彫刻美術館」にやってきました。こちらの建物は、市内で唯一、国の重要文化財の指定を受けています。耐震補強のため、2012年(平成24年)から改修工事に入り、昨年10月にリニューアルオープンを果たしました。生まれ変わった彫刻美術館をじっくり楽しみたいと思います。


 

彫刻美術館(旧旭川偕行社)
明治期としては珍しい白亜(白壁)の洋風建築物で正面は漆喰塗り,屋根には神社仏閣等で見られる懸魚が施されるている一方,イギリス積煉瓦煙突や側面は板張り(イギリス式下見板)になっているなど和洋折衷の建築様式が見られる。

 

彫刻美術館の建物は、1902年(明治35年)に、旧陸軍第七師団の将校たちの社交場
「旭川偕行社」として建設されました。後に「旧旭川偕行社」と名づけられ、旭川郷土博物館としての利用を経て、1994年(平成6年)に旭川ゆかりの彫刻家、中原悌二郎を記念した彫刻美術館となりました。大きなバルコニーが備えられた豪華な造り。
工事に伴って外壁の塗装も行われたため、白が濃く、美しい建物です。

カーテンボックス
よく観察してみるとカーテンボックスに施されている木彫飾りのデザインは3種類ある。外が歪んで見える一部のガラスは当時の吹き板ガラスをそのまま利用しているのだそう

 

館内を案内してくれたのは、館長の大木啓さんです。「中原悌二郎は釧路で生まれ、9歳から15歳まで旭川で過ごしました。東京で彫刻家になった後も『故郷は旭川』と話していたそうです」。
中原悌二郎は32歳の若さで他界し、現存するのは全12作品しかありません。そのすべてがこちらに展示されています。「人間の内面をも表現する彫刻家」との大木さんの説明どおり、いずれも味わい深い表情をしたブロンズ像が並んでいます。中でも注目したのは、代表作の「若きカフカス人」。中原悌二郎が制作途中でモデルとケンカをしてしまったため、実は未完成だそうです。見てみると、確かに後頭部が出来上がっていません。珍しい作品ですね。
常設展示室は、リニューアルを機にパーテーションを取り払い、順路もなくしたため、どこからでも自由に観覧ができます。中原悌二郎の作品の他にも、1970年(昭和45年)に旭川市が創設した中原悌二郎賞の歴代の受賞作品も楽しめます。常設展示室となっているのは、旭川偕行社時代に会議や宴会等に使われていた大広間。細かなデザインの木彫のカーテンボックスや、天井に施された装飾など、100年以上前の内装がそのまま残されていて、華やかな場であったことがうかがえます。当時、建築費が一体いくらかかったのか気になったので、大木さんに尋ねてみましたが、残念ながら「不明」とのことでした。

中原悌二郎賞受賞作品コレクション
その時代時代の日本を代表する彫刻家の作品を一度に展望することができる常設展示室

 

館長の大木さん(右)。中央にあるのは屋根裏にあった「棟札」。 当時の師団長や建築に携わった関係者の名前や年月日が記されている。

 

また、「中原悌二郎資料室」や、「旧旭川偕行社資料室」も併設され、見どころが多いです。
市内のあちこちに約100基の野外彫刻が設置され、「彫刻のまち」とも呼ばれている旭川。2000年(平成12年)からは、より彫刻に親しめるよう、彫刻フェスタを開催しています。今年は7月末から北彩都地区で、彫刻家、明地信之氏による公開制作が行われます。動物をモチーフにした作品で、フェスタ終了後は彫刻美術館に面した「春光園」に設置される予定です。ぜひ、皆さんも彫刻を身近に楽しんでみてください。


芸術・文学・自然がそろう春光エリア

彫刻美術館の隣には、旭川ゆかりの作家、井上靖の歩みを知ることができる「井上靖記念館」があります。東京の旧井上靖邸から移築した「応接間」など、ここにしかない展示物も数多く並んでいます。お得な「彫刻美術館・井上靖記念館共通券」も用意されていますので、両館合わせての観覧がおすすめです。 また、すぐ近くには緑豊かな春光園が広がっています。芸術・文学に浸った後、ベンチに腰かけたり、散策したりしてゆっくり過ごしてはいかがでしょうか。

 


取材協力

中原悌二郎記念 旭川市彫刻美術館

住所/旭川市春光5条7丁目

電話/0166-46-6277
開館時間/午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日/月曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始【6月から9月は無休】
観覧料/一般 : 300円・高校生 : 200円・中学生以下 : 無料
1年間有効のパスポート/一般 : 600円・高校生 : 400円

http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/kurashi/329/348/358/index.html


今回のリポーター
 小林 亨

北海道新聞旭川支社長 趣味はテニスとスキー。

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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