北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


シンリンオオカミ*偉大な父の跡継いだノチウ


 
 シンリンオオカミのケン(雄)が昨年10月10日、老衰により13歳で死んだ。展示施設「オオカミの森」開設に合わせ、2007年にカナダの動物園から来園した。パートナーのマース(雌、12歳)とともに9頭の子を育て、一家の偉大な父であるとともに群れのリーダーだった。
 オオカミは数頭の群れで狩りや子育てをする。家族間であっても激しい闘争が起きると、仲間からはじかれたり、殺されたりするものも出る。特に動物園のような飼育下では逃げ場がないため、旭山のように群れで飼育する園は珍しい。
 ケンは育児に積極的で、子どもたちが大きくなった後もけんかが激しくなると、なだめるように間に入って止めた。飼育担当だった佐橋智弘さん(37)は「力で支配するのではなく、相手を認めながらまとめていた。群れで飼育することができたのは、ケンがいたから」と話す。
 ケンの死後、園に残った4頭の子の中で末っ子のノチウ(雄、5歳)が新リーダーになった。ノチウはケンのように姉同士のけんかを仲裁し、群れもノチウに対し、顔をなめたり、尾を丸めたりとリーダーを敬う行動を取る。現在の飼育担当の原田佳さん(41)は「まだケンほどの威厳はないが、群れは穏やかに過ごしている」と見守る。
 ケンは死ぬ数日前から、自力で立ち上がりにくくなり、群れが生活する施設と隣接する飼育場で、治療を受けた。その間も金網越しに群れと対面を続け、子どもたちは日に日に衰えていく父を見て、少しずつ死を受け入れていった。「ケンは群れの中で、オオカミらしく一生を終えた」と佐橋さん。「立派に生き抜いた父の姿を見届けた子どもたちが、ケンに負けないくらい素晴らしい群れを築いてほしい」と願っている。(若林彩)
 
【写真説明】ケンの死後、群れの新リーダーになったノチウ(左)=宮永春希撮影
(2021年2月21日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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