北極星
道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら
沢田典子(旭川道新エッセー教室受講生)*レターtoマザー
高齢の親と一つ屋根の下で暮らすことは、なかなか難しい。互いが互いを思い、日々笑顔で明るく暮らせることを願っているが、現実には、うまくいかないことが多々あるのだ。
母は84歳。31歳で夫に先立たれ、学校給食調理員をしながら兄と私を育てた。母子家庭だったが、やりたいことはやらせてもらい、欲しいものは買ってもらい、伸び伸び自由に育った。私が人生の岐路に立った時、選ぶ道を後押ししてくれたのも母だった。
母は定年後、長年の夢だったピアノを習い、体操サークルに参加した。それまでなかった余暇の時間を存分に謳歌(おうか)していたが、7年前、パーキンソン病と診断された。
幸福感をもたらす脳内物質が低下、鬱(うつ)傾向になった。暗い表情で自身の過去の成功体験に固執する母。どうしてもいらいらし、怒ってしまい、それを反省する負のスパイラルである。その度に思う。「母との時間はあとどの位あるのだろう。限られた時間を少しでも一緒に楽しみたい」
先日、母が興味を示したネイルサロンを予約した。薄紫の奇麗な爪になったら、少しは明るくなってくれるだろうか。母が選んだ色には、人の心を勢いづけるパワーがあるそうだ。「お母さん、いつも怒ってばかりでごめんね。紫色のパワーも借りて、少し明るくなろうね」
(2024年08月26日掲載)
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