北極星
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稲荷桂司(旭川・公務員)*根拠のない自信
私は物心ついてこのかた、自信というものを持ったことがない。しかしそんな私にも最近、根拠のない自信のようなものが芽生えてきた。
子供の頃からそこつ者で物をなくすことが多く、それはいまだに変わりないのだが、このところ物をなくしても慌てて探すようなことはなくなった。例えば先日、家の中でワイヤレスイヤホンをケースごと取り落とし、ふたがその拍子に開いてイヤホンが飛び出し、どこかへ行ってしまった。
しかしそのうち出てくるだろうとあえて探さずにいると、まずは右耳分が、置いてあった服を手に取ったときにポロリと落ちた。その2日後、置いてあった箱を移動させたときに左耳分をコツンと蹴飛ばし見つけた。
なくしてすぐだと、どうしても焦って探してしまうが、そんな精神状態で探しても見つかるわけがなく、いっそうイライラして疲れがたまるだけだ。そう割り切って無理に探さなければ、平穏な日常を過ごしているうちにちゃんと見つかるという自信をある時から持てるようになった。しかしこれは自信というよりは、むしろ穏やかな精神状態という気がする。
もしかしたら自信というものは、具体的な根拠に支えられたものではなく、落ち着いてやれることをやるという、心構えにすぎないのかもしれない。
(2024年07月22日掲載)
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