北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


漢幸雄(士別・劇場館長)*男子寮の記憶

 高校進学と同時に親元を離れて旭川での寮住まいとなった。大学生などを含む40人ほどの男子寮。地方から来た男子だけの暮らしは慣れれば楽しい。なにせ親の監視の目が届かない。

 携帯やネットのない昭和50年代、10円玉を握りしめ公衆電話に行かねば、親と連絡が取れない。しばらくすると寂しさより、開放感が際立ってきた。10代の男子が集まればろくなことをやらかさぬもので、地元の警察が夕食時に説教にやって来るのもさもありなん。

 同じ釜の飯を食べた仲間も高校卒業と同時にバラバラになり、途切れ途切れに消息が入って来るのが関の山。まあ元気でやっているならいいや、ということなのだが、還暦を過ぎて様子が変わってきた。

 いつかは誰もが亡くなるのだから仕方がない。そう思いながら、実際に仲間に死なれてみると悲しみ、さらに寂しさが先に立つ。いつでも会えると思っていたのに、もうかなわない。日頃の無沙汰がこんな形でやって来る。

 迷惑をかけた舎監、賄いのおじちゃんやおばちゃんの顔がしっかりと思い出せない。学校や街の景色も輪郭がぼやけたようにしか思い出せぬ。往時茫々(ぼうぼう)、半世紀もたつと3年間食べた釜の飯の味すら忘れている。それでも懐かしく思い出すのは、あの寮暮らしなのだから不思議だ。

(2024年10月21日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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