北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


立石淑恵(オホーツクミュージアムえさし学芸員)*馬とともに

 今年の干支(えと)はうま。オホーツクミュージアムえさしの常設展示の目玉のひとつにも大きなそりを引く馬の剝製があります。明治時代から昭和初期まで深い雪に覆われる北海道の冬の交通や運搬の主役は「馬そり」でした。

 馬そりは明治30年頃には道内全体で1万台が使われ、開拓が進むにつれ昭和初期には10万台に増えました。馬そりの用途はさまざまで、市街地では商店の配達用、農家では牛乳の輸送用、山仕事の現場では原木の輸送用に重宝されていました。また、荷台に箱を取り付けて人間が乗るために工夫を凝らしたものもあり、当館の馬そりも、牛乳瓶を載せ、親子3人が乗っています。

 また、ときには馬そりで花嫁を迎えに行くこともありました。雪が降り積もり、あたり一面が白一色になった美しい景色の中、ゆっくりと馬そりに乗ってやってくる花嫁を思い浮かべると、なかなかロマンチックな光景です。しかし、馬そりが通った道には点々と馬ふんが落ちていたとか。理想と現実は違いますね。

 馬そりは、昭和30年代以降は自動車の普及と農耕馬の減少に伴って急激に減り、現在ではほとんど見られません。しかし、かつて生涯を人間と共に働き、命を終えた馬たちは厚く弔われました。馬たちは、長い間厳しい冬の生活にはなくてはならない家族同然の大切な存在だったのです。
(2026年03月09日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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