北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


為井恵子(旭川道新エッセー教室受講生)*祖母は丙午生まれ

 祖母は明治39年(1906年)の丙午(ひのえうま)に生まれた。

 実家は樺太の海産物問屋で繁盛していた。末っ子の祖母は、なかなかの策士だった。丙午生まれを逆手にとり「どうせ嫁のもらい手はない。だから女学校にいかせてほしい」と親の反対を押し切って進学した。

 一旗揚げようと旧満州(現中国東北地方)に渡って店も出した。商才にたけ、ずいぶんもうかったが、戦後は無一文で引き揚げてきた。生きていくためによく働き、子供たちを育てあげた肝っ玉母さんだった。

 晩年は大阪で1人住まいした。何しろ嫁との同居は真っ平というタイプ。長女の母が高齢の母親を案じ、「孫なら一緒に住めるだろう」と私に白羽の矢が立ち、進学と同時に祖母と暮らすことになった。

 快活な性格で、近所の人がよく遊びに来ていた。チャレンジ精神も旺盛で「70歳の手習いだよ」とマージャンも覚えた。私が今、サークルやボランティア活動を楽しんでいるのは、彼女の影響かもしれない。

 口癖は「できる親切はしなければいけない」。引き揚げ時、空腹の子供たちに食べ物をくれた人の恩義は今も忘れられないとよく語っていた。人に感謝し、いつも生きていくのに前向きな姿勢は終生、変わらなかった。今年は丙午年。活発だった祖母を思い出し、何やら元気が出てきた。
(2026年03月02日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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