北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


沢田典子(旭川道新エッセー教室受講生)*父と私と万博と

 開幕当初、大阪・関西万博に行こうとは思っていなかった。

 勤務する病院で、過去と現在を比較する写真などを掲示し、患者さんに待ち時間を楽しんでもらう取り組みをすることになった。調べていくと、旧万博は「人類の進歩と調和」、現万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマだそうだ。なるほど、これはぜひ行ってみたい。

 旅行2週間前、ふと仏間の写真に目がいった。セピアを超え、背景もあやふやになる程に色あせた写真には、55年前の大阪万博でほほ笑む、当時35歳の父が写っている。この翌年がんで他界した。よし、父も連れて行こう。写真の額を巾着に入れ、大阪に向かった。

 会場に着き、象徴の大屋根リングに登った。さまざまな形をした各国のパビリオン、その向こうに広がる空と海、祭りを楽しむ人たちの喧騒(けんそう)。やはり、自分の目で見て、肌で感じる大切さがある。

 写真を取り出し、会場に向けた。父はどう見ているだろう。あなたが万博に行くことを隣近所に自慢した3歳の娘は、あなたをはるかに超える年齢になった。

 万博会場は夢洲(ゆめしま)だ。夢に出てきて、ぜひ感想を教えてほしい。語り合えたら、尚更うれしい。でも、ひょっとすると、万博の感想ではなく、「いつもビールばかり飲んで!」と怒られるかもしれない…。
 
(2025年12月22日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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