北極星
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森川理加子(士別・羊農家)*熊のいる山での本音
熊論争が熱を帯びている。山奥に住む私としては、ヒグマ駆除反対派の「熊が先に住んでいた」という主張には納得がいかない。
一昨年と昨年、100本ほど植えたトウモロコシを食べ尽くされ、今年は植えなかった。日常生活に使うわき水を貯(た)めるタンクやホースも荒らされる。修理のため、熊のいた水源地に向かう作業は恐ろしい。近辺での目撃談も多いが、住民は面倒を避けて黙っており、通報しているのは通りすがりの人などだという。
離農で山林に戻った畑も多く、開けた土地は全体から見ればわずか。山には実りがあちこちにある。熊は楽を覚えてしまったのだろう。やぶの中を歩き回ってえさを集めるより、畑は1カ所で豊富に食べられる。
10年ほど前までわが家の周辺に熊はいなかった。先住権を言うならどう考えても私の方が先だ。「大昔は熊の土地」という論理を突き詰めることには危うさも感じる。2000年前にさかのぼる歴史的権利を主張して建国したイスラエルと、その過程で故郷を失ったパレスチナ人との紛争を思い出してしまうのだ。人と熊の関係には、似たような難しさがあると思う。
お互いこの土地から引けない以上、刺激を避けつつ暮らし、危険があれば駆除もやむなし、というのが現実的ではないか。これが山で暮らす者の本音である。
(2025年09月07日掲載)
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