北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


漢幸雄(士別・劇場館長)*読むことは

 小学校に入学したとき、名前を書くことも読むこともできなかった。授業が分からず教室内をうろうろしていた。3年生になった時、担任が授業中に漫画を読むことを勧めてくれた。ルビが振ってあれば何とか読み進めることができる。そうして少しずつだが読むことの楽しさを覚え、学校の図書室は私にとって初めて知る世界の入り口となった。行ったことのない場所や会ったことのない人、知らないことを教えてくれた。

 公共図書館の棚は未知と出会う場だ。ふと手に取った一冊が新しい世界を見せてくれる楽しさもある。デジタル本が普及しつつあるが、私は紙の本で行きつ戻りつ、読み進めたい。

 書店では新刊が主だが、図書館では、長い年月をかけて、住民の多様なニーズに応えるための蔵書が蓄積されてきた。意外な一冊が探し求めていることの手がかりとなることも珍しくない。時には司書がその知識でガイドをしてくれる。

 図書館の本はマチの宝であり、未来を育む土壌だ。効率や数字だけでは測れない価値がある。過去の知識の集積を守り、活用することは、次の時代を探る確かな源泉となる。豊かさを感じられるマチは、そんなささやかな知の蓄積の上に築かれていくはずだ。図書館へ行こうよ、本を読もうよと、小さな声ではあるが心からお誘いしたい。

(2025年06月02日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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