北極星
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國枝保幸(市立稚内病院長)*第六感
亡父は米寿の年まで市立稚内こまどり病院(市立稚内病院の分院)に勤務し、病院の中の一室に居住していました。
ある時、私が部屋を訪れると、父は自分のおなかの1カ所を指し示して「ここに何かある気がする」と言います。私はそんなことわかるわけないだろうと、返事もせず立ち去りました。
そんなやりとりも忘れていたころ、一緒に働いていた女性の研修医が私のところに走って来て、「パパ先生(父親)の大腸にこんなものがありました」とインスタント写真を示します。
そこには、(全く医学的表現でありませんが)「真っ赤に熟(う)れたポリープ」が写っていました。その場所は、まさに父親が指し示したおなかの位置でした。
父親は冷たい息子ではなく、笑顔でいつも話を聞いてくれる研修医に相談して検査をしてもらったようでした。
通常は処置の内容と起こりうる合併症を説明し、同意書をいただいてからポリープを切除するのですが、私は「穴をあけても文句は言わないから入院させてポリープを取ってください」と研修医に告げました。それは、彼女にとって初めての大腸ポリープ切除の症例となりました。
医者がどのように成長するのかを知り、研修医に検査を依頼した父親を誇らしく思う出来事でした。
(2025年05月19日掲載)
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