北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


稲荷桂司(旭川・公務員)*出典は

 国立国会図書館の資料をインターネットを通じ閲覧できるデジタルコレクションで、内容を検索できる対象が300万点を突破したという報道を見た。前から時々利用はしていたが、これだけのデータが無料で利用できる状況には感慨深いものがある。

 このサービスは、ある言葉が使われ出した時代を調べるのにも役に立つ。たとえ有名な言葉でも、いつ頃、誰が言い出したのかは意外にわからないことが多い。しかも実際調べてみると、言い始めた人や言葉の意味が違ったなどということもある。

 有名なものでは「少年老い易(やす)く学成り難し」の句で有名な儒学者朱子の作とされる詩が、近年では日本人の作であることがほぼ確実視され、また王陽明の作とされる「水五訓」なる警句も昭和の初めに雑誌に載った文が最も古いと言われる。

 私を含め人間は権威に弱く、偉人の言葉と聞くとすぐ感心してしまう。無論、言葉の価値は誰の言葉かは関係ない。ただ、先の2例が偉人の名を冠して広まったのは、日本が全体主義へと進む中で人々を扇動した時代だったのは心に留めるべきだろう。物事を判断するのはあくまで自分。そのためには言葉一つでも、根拠を調べる習慣が必要ではなかろうか。

 今は亡き大学の恩師が、言葉の調べ方が甘い私に「出典は?」と厳しく問い詰める声が、懐かしくよみがえる。
(2025年02月03日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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