北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


佐藤隆政(東川・不動産会社経営)*「無」から創り出す

 私は1953年、ベビーブームの終わりごろに生まれました。両親の話だと、敗戦後何も無い時代で生きていくのに精いっぱいの中で結婚したそうです。布団くらいはあったのでしょうが、ちゃぶ台も皿も無く、貝殻を皿の代用にしてしのいだそうです。

 その様な時代に生まれましたので、おもちゃなど買ってもらった記憶はありません。小学生のころ、野球がはやってきた時期でしたが、うちにあるのは軟式ボール一個だけ。グローブもバットも有りませんでした。

 そういう家庭でしたから、野球道具を買ってほしいと言う事すら思いつきませんし、また、買ってくれるはずもありません。それではと思い、小屋に角材がありましたので、バットの長さに切り、ノミとカンナでバットもどきを完成させました。そのバットをおやじに見せると、思い切り天高くボールをかっ飛ばしました。おやじのすごさを感じると同時に、そのボールを遠くまで拾いに行くときのむなしさを今でも覚えています。

 足りないものは自分で作る。幼いころしみ付いたこだわりは、社会人でも生きました。私が銀行に入った昭和50年代は、まだまだアナログの時代。パンフレット作りを業者に頼むととんでもなく高く時間が掛かりましたので、自分で原稿を作り、コピーして営業活動をしたものです。

 今も、経営する会社の広告なりアイデアは、ほぼ私が携わっています。お金を出せば何でもそろう便利な世の中ですが、かえって「無」から「創り出す」能力は低くなっているようで、皮肉に感じます。

(2024年07月08日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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