北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


「利尻うみねこゲストハウス」オーナー 西島徹さん(54)

遊び心あふれる旅人もてなし*わくわくした非日常を

 【利尻富士】島の玄関口、鴛泊港フェリーターミナルの目の前にある「利尻うみねこゲストハウス」には最果ての島を目指す旅人が集う。島の魅力を堪能した宿泊客には「利尻人」認定証を、悪天候で島を出られない人には「欠航難民」ステッカーを―。オーナーの西島徹さん(54)に、旅人との交流や遊び心あふれるもてなしについて聞いた。
 
――利尻山と海を間近に望む宿ですね。フェリーで島を離れる宿泊客を毎回、見送ってくれます。
 「『行ってらっしゃーい』と大漁旗を振って、船が小さくなるまでお客さんを見届けます。列車や飛行機ではなく船だから、そして島だからこそできる体験です。2001年に礼文島のユースホステル『桃岩荘』に泊まって自分が見送ってもらったとき、ものすごく感動したんです。お客さんもじんとすると思い、16年の開業以来続けています」

――宿を始めたきっかけは。
 「30代で日本全国を旅していたとき、ただ泊まるだけでなく、お客さんやオーナーの交流を軸にした宿の形を知りました。04年に島へ移住し、利尻で旅人がわいわい集える宿をつくりたいと思うようになりました。自然ガイドをしながら、浮かんだアイデアや気に入った宿の間取りをノートにまとめていましたね」

――遊び心のあるもてなしが人気を集めています。
 「例えば、島で三つのチャレンジに成功した人を『利尻人』に認定し、賞状やストラップを渡しています。《1》海抜0メートル地点から1721メートルの利尻山に上り、また海抜0メートル地点に戻る《2》徒歩で島を1周(約55キロ)《3》自転車で島を1周し、四つの急な坂を登る―という内容です。『欠航難民』ステッカーは『お金で買えず、レアですよ』と言うとみなさん笑ってくれます」

――こうした取り組みを続ける理由は。
 「わくわくした非日常を過ごすことが旅の醍醐味(だいごみ)。自分たちが楽しいと思うことをお客さんにも味わってほしいです。利尻人の認定を目指してまた利尻に足を運んでくれる人もいます。車と違った景色が見え、島を深く知ってもらえます」

――長男一樹さん(16)も「番頭さん」の愛称でお客さんに親しまれています。
 「お客さんと海で泳いだり、ギターを弾いたり。現在は江別市の高校に通っていますが、『番頭さんに会いたい』と成長を楽しみに来てくれる人もいます」

――どんなときに宿を開いて良かったと感じますか。
 「島めぐりが好きな人や日本一周をしている人、登山やサイクリングを楽しむ人。道内から沖縄まで、個性あふれる人が泊まりに来ます。お客さん同士が意気投合し、旅を終えて島外で食事をすることも。旅立つときに『また来ます』と言ってくれる瞬間がうれしいです。今季の営業は終わり、来春から再開しますが、テーマパークみたいに、うちのゲストハウスを目指して利尻に来てくれる人が増えたらありがたいです」
(聞き手・稚内支局 菊池真理子)
  

*取材後記
 「春になると利尻へ帰ってくるウミネコのように、島にやってくる旅人を迎えたい」。宿の名前の由来を教えてくれた。私も取材で泊まる度、「今回はどんな人に出会えるかな」と心が弾む。宿の玄関扉を開けるといつも「お帰りなさい」と朗らかな笑みで迎えてくれる西島さん夫妻。二人の温かさと利尻島の自然が旅人の心をほぐしてくれる。
  
 にしじま・とおる 1969年福岡市生まれ。92年に西南学院大(福岡)を卒業後、東京都内の印刷会社に勤務。2000年に退社後、3年ほど全国を旅し、04年に利尻島へ移住した。16年に妻加奈子さん(54)とゲストハウスを開設。自然ガイドも務める。

(2023年10月16日掲載)
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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