北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


国稀酒造取締役企画室長 本間桜さん(62)

添乗員の経験生かし発展に力*気取らぬ酒 アジアにもPR

 【増毛】1882年(明治15年)創業で、最北の酒蔵として知られる国稀酒造。取締役企画室長の本間桜さん(62)は、創業者本間泰蔵のひ孫として、歴史の継承と蔵の発展に力を注いでいる。豪商・本間家に生まれた半生と、現在の仕事について聞いた。
 
――中学卒業まで過ごした増毛での暮らしを教えてください。
 「後に国指定重要文化財となった旧商家丸一本間家(1902年完成)に住んでいました。天井が低い2階の自室や、客人がひっきりなしに訪ねてきた毎日が懐かしいです。食事は酒を使ったメニューが多く、(国稀酒造の)佳撰(かせん)を鍋に注いで豚肉をくぐらせる『酒鍋』やかす漬け、母はみりん代わりに卵焼きにも入れていました」

――2001年に入社するまで、どんな経緯があったのでしょうか。
 「札幌の短大を出てから海外留学に行ったり、ツアー添乗員として働いたりしていました。戻ったきっかけは、実家が文化財指定を受けるのに引っ越しの必要が生じたことです。20部屋以上に大量の家財道具があったので、2年ほどかかりました」
 「当時、社内では売店や広告部門を担当する新部署として企画室が立ち上がり、入社と同時に室長に就きました。添乗員時代は全国各地の酒蔵で、お客さんが試飲や工場見学を楽しむ姿を見てきました。国稀にも多くの人を呼び込むため、おもてなしの充実に知恵を絞りました」

――企画室の仕事内容は。
 「売店と広告のほか、ラベルのデザイン、取材対応など幅広く担当します。個人的に難しいのは、新商品の名前を考えることです。味の特徴などから熟語を探すのですが、いいと思ったものはたいてい、既に使われています。最近は名付けのヒントとして句集を片手に作業しています」

――コロナ禍がようやく下火になり、売り上げも回復してきたと聞きました。今後取り組むことは。
 「海外輸出に力を入れていきたいです。特に新しい市場である韓国やベトナムなどのアジア圏に注目しています。今春に台湾出身の2人を採用したので、国稀を置いてくれる現地の飲食店を見つけてほしいです」

――現在は限定酒を含め54種類の酒を販売しています。改めて、国稀の魅力はどんなところでしょう。
 「『全国展開の銘酒』と言ってもらえることもありますが、実は出荷の95%超は道内です。幼少期から酒に囲まれてきた私は、この認識にギャップを感じることがあります。国稀はゆったりとした増毛の街並みや、古い酒蔵の雰囲気が詰まった気取らない酒です。暮らしのそばに置いてもらえるよう、背伸びせずにPRしていきたいです」
(聞き手・留萌支局 吉川幸佑)
 
*取材後記
 「アイデアはいつも止まらない。抑えるのが大変なほど」と明るく話す姿が印象的だ。添乗員としての勤務をはじめ、町外で過ごした経験と視点が「今の仕事に生かされている」と教えてくれた。
 今後取り組みたいこととして、社史の作成を挙げた。「国稀の歴史は本間家の歴史でもある。私と姉にしかできないことで、何年かかってもやり遂げたい」と真剣なまなざしで語った。
 
 ほんま・さくら 1960年、増毛町生まれ。北星学園女子短大卒。海外留学や民間企業を経て2001年に入社。入社時から企画室長を務め、03年に取締役就任。父は元増毛町長の故本間泰次氏で、趣味は道外の酒蔵巡り。
 
(2023年5月1日掲載)
  

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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