北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


獣医学生の実習受け入れ*教育活動も役割の一つ


 知り合いから「旭山動物園では多様な動物を診る必要があるから、大学時代にも多くの動物について勉強していたの?」と聞かれることがあります。

 答えは「ノー」。大学で勉強する動物は牛馬と鶏豚といった畜産動物、それと犬猫の愛玩動物だけです。ウサギやモルモットですら勉強する機会はありません。いわんやライオンをや、というのが現実です。

 では、どう動物園のペンギンやキリンを治療するかといったら、就職してから勉強するしかありません。先輩獣医師に聞いたり、野生動物の数少ない専門書を読んだり、論文を調べたりして試行錯誤を重ねます。いつまでも勉強が必要です。

 大学時代に独学以外で唯一、勉強する機会があるとすれば、動物園実習です。すべての学生が行うわけではなく、興味のある学生が全国の動物園にお願いして、数日から数週間にわたり実習をさせてもらい、勉強することができます。ちなみに大学時代の私は動物園に興味がなかったため、動物園ではなく、北海道農業共済組合連合会で牛の診療の実習をしました。

 この原稿を書いている現在、旭山動物園では道内外の大学から3人の獣医学生(5年生)が実習中です。毎日、熱心に獣医師や飼育スタッフに付いて回り勉強しています。

 実は、獣医学生の実習受け入れは動物園の業務ではなく、授業料ももらっていません。動物園の役割は「レクリエーション・保全・研究」、そして「教育」の四つがあり、旭山動物園は教育活動の一環として受け入れています。また、自分が学生だったときに受け入れてもらった恩返し(私は違う業界でしたが)や、卒業後に動物園に入って活躍してもらいたいという期待の意味もあります。過去の実習生の中には他の動物園で働いている人も複数いて、たまに再会するとうれしくなります。

 意識されることの少ない教育活動ですが、もし旭山動物園の獣医師が園内で学生を連れ歩いていたら、優しく見守ってくださいね。
(獣医師・トナカイ担当 中村 亮平)
 
【写真説明】タヌキの健康診断で採血に四苦八苦している動物園実習の学生たち
(2022年8月22日掲載)

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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