どうほく談話室
東川、旭川拠点の人形作家 宮竹真澄さん(72)
創作44年 道内外で巡回展*世相や思い 昭和の風景に込め
【東川、旭川】東川、旭川を拠点に創作活動に取り組む人形作家、宮竹真澄さん(72)は、昭和の頃を思わせる農村風景や市井の人々の姿などを表現してきた。独学で人形作りを始めて44年、「心のふる里人形展」と題し、道内外で巡回展を始めてから15年。創作への思いを尋ねた。
(聞き手・旭川報道部 桜井則彦、写真・宮永春希)
――人形は笑顔と愛らしさが特徴的ですね。
「東川に一家で移住したとき、母が地元のおばあちゃんたちと友達になり、その友達が作った野菜などを届けてくれるようになりました。おばあちゃんたちの温かい笑顔を見たのが現在の人形創作の基になっています。もともと本を見て制作を始めましたが、東川に来て作風が変わりました」
――制作で心掛けていることはありますか。
「人と会うとき、表情のほか、体格や服装、しぐさ、ベルトの位置なども見て、作品に生かします。顔を大きくして、アンバランスさで温かみを表現します。想像を加えたり、自分でもポーズをとって考えたりもします。小道具も情景を語ってくれます。風呂敷は『愛妻弁当が入っているのかな』、集団就職の女子学生が持つかばんなら『親の精いっぱいの思いがこもっている』とか。また人形は立体表現なので、作品の後ろ姿も見てほしいですね」
――風景の題材は何ですか。
「8割くらいが昭和の風景で、いろいろな人の話を聞きながら、自分の経験、思い出も織り込みます。田舎で遊んでいた記憶や、近所のおばちゃんに怒られた思い出などです。経験のないことは、図書館で近い風景がないか探します。ニュースなどにも刺激を受けています。例えば、馬そりの荷物は、コロナ禍で生乳廃棄の恐れという話を聞き、ミルク缶にしました」
――巡回展では東日本大震災の翌年から、被災地慰問展も続けています。
「被災地の様子を作品にしていいのか葛藤はありましたが、2012年の気仙沼市(宮城県)での展示以降、多くの人が『よく来てくれた』『笑顔になれた』と言ってくれました。被災地以外でも被災者をモチーフにした作品を展示しています。終わっていない、忘れてはいけないということを感じてほしいと思います」
――9月14日から旭川で作品展です。
「今春までに制作した新作も展示します。おばあちゃんにはトンボ柄の服を着せました。トンボは縁起物で、農家には害虫を食べてくれる益虫です。コロナという『害虫』を食べてほしいとの思いも込めました。今後は丁寧に一点一点作りつつ、今までにない作品にも挑戦したい。まだ作品展を開いていない地域にも出掛けていきたいですね」
*取材後記
直接知らなくても、どこか懐かしく感じる。宮竹さんの人形がつくり出す世界だ。そして眺めていると、自然に自分の口元も緩む。昭和の原風景には、古き良き日本とのイメージを抱いたが、宮竹さんに創作活動について話を聞くと、そこにとどまらない背景が込められていた。作品展では人形制作中の思いなどの説明も添えられるという。会場であらためて見つめたい。
みやたけ・ますみ 1949年、大分県宇佐市出身。東京、神奈川で専業主婦の傍ら独学で創作を始め、91年に東川町に移住。心のふる里人形展は120回を数え、慰問展として宮城、岩手、福島県では10回開いた。旭川市東旭川町に工房を構える。
(2022年8月22日掲載)
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