北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


オランウータンのモカ*支えの兄と離れ 独り立ち


 旭山動物園では3頭のボルネオオランウータンを飼育しています。雄のジャック、その子にあたるモリトとモカのきょうだいです。今年4月、約3年間続いた兄モリトとの同居を終え、妹のモカが独り立ちしました。

 モカは2019年に母リアンが急死し、4歳になったばかりで孤児になりました。当時のモカはたまに乳を吸っていた時期で、リアンに怒られた後、不満顔で乳に吸い付いていた姿が印象に残っています。

 オランウータンは群れをつくらない動物です。子育て期間が長く、子が独立するまでに7~10年ほどかかり、その間は基本的に母と2人だけで暮らします。子は単独で生きていくため、「オランウータンとしての生き方」の全てを母親を見て学びます。母親の存在は精神的にも肉体的にも子の成長に欠かせません。

 モカは孤児ですが、餌には困らないため、1人で暮らすこともできました。しかし精神面の成長を考え、当時すでに独立していた兄のモリトとの同居を試みました。モリトは穏やかな性格で、独立後もたまにリアン親子と過ごしていました。そうしたことも関係したのか同居は成功し、「保護者」になってくれました。母親ではないので、モカの感覚では「頼れる大人」という存在でしょうか。それでもモカの精神の安定や成長に良い影響があったと考えています。

 モカは今年7歳になりました。野生のオランウータンでも早い個体なら独立し始める年齢。性成熟までは猶予があるものの、近親交配の可能性もあることから、同居は終了にしました。同居解消後、モリトは普段通りでしたが、モカは不安そうな様子で鳴いたり、イライラしたりすることがありました。最近は、だいぶ落ち着いてきました。

 モカとモリトは今後、オランウータンらしい「1人暮らし」をすることになります。モカは一人前のオランウータンに、そしてモリトは立派な大人の雄になっていくでしょう。成長をぜひ見守っていただければと思います。(オランウータン担当 中野奈央也)
 
【写真説明】今年4月に独り立ちしたボルネオオランウータンのモカ
(2022年6月20日掲載)

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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