どうほく談話室
士別サフォーク研究会会長 志村富美恵さん(56)
*食肉、工芸、観光…多方面からまちおこし*「羊のまち」に貢献 今後も
士別のシンボル、サフォーク種の羊を軸に、肉、毛の活用など多方面からまちづくりを推進する市民団体「士別サフォーク研究会」が設立され、今年で40年。士別らしさを追求する同会の歩みと展望について、志村富美恵会長(56)に聞いた。(聞き手・士別支局 大口弘明)
――会長は、研究会の部会の一つで、羊毛を活用した工芸に取り組む「くるるん会」を中心に活動してきました。羊毛の魅力とは。
「羊毛には温かさ、癒やし、やすらぎを感じます。羊毛を毛糸にして編むことだけでなく、染め、織りや(羊毛に針を刺して造形する)ニードルフェルトと、バリエーションがたくさんある、奥深さも魅力です」
――会員が作ったセーター、手袋などの作品を、観光牧場羊と雲の丘の一角にある「めん羊工芸館くるるん」で販売しています。
「大型連休中は観光客が多く、コースターとか針山など小物が売れます。マフラー、帽子といった製品は秋口ですね。メンバー15人がそれぞれ時間をみて作るので、大量生産はせず一点一点大事に作るものが多い。『色違いがほしい』とか『高い』とも言われますが、手間暇を考えると―。東京などの物産展では『いいもの』として認め、買い求める方が多くいました」
――羊毛を使った作品のコンテスト「ニット大賞」を隔年で開いています。
「昨年も全国から作品が集まり、ニットデザイナーの広瀬光治先生に特別審査員で来てもらいました。『ニットのコンテストはとても貴重。ぜひ続けてほしい』と言われました。応募者の多くは、作品が展示されるのを見に士別まで来てくれる。昨年はコロナの影響がありましたが、観光にも役立っています」
――在札幌グアテマラ名誉領事で税理士の名越(なごや)隆雄さんの仲介で、同国の天然染料で羊毛を染める活動に向け前進しています。
「私たちはこれまでも、士別の植物での草木染を重視していて、通じるところがあります。名越さんや、グアテマラの事情に詳しい人を招いた勉強会を6月に開きます。研究会の活動を通じ、たくさんのご縁が生まれ、喜んでいます」
――研究会全体で見ると、くん製ラム肉を使った新商品開発や、観光客と羊とのふれあい体験など、最近の活動も各部門で多岐にわたっています。
「40年間、絶えることなく続いているのはすごいこと。羊皮紙の生産は昨年終わってしまいましたが、手間暇かかる作業なのによく続きました。100人ものメンバーがいて、やることも考え方もそれぞれです。でもまちおこし、という1点で協力し合っている。士別に貢献したい、という気持ちでつながっています」
*取材後記
羊毛は、春に刈った羊の毛を受け取った後、洗って脂やごみを除去したら草木染。毛をすいて糸紡ぎ。編み始めるころには秋めいているという。作業の大変さや、メンバーの熱意の一端に触れた。羊といえば肉を思い浮かべがちだが、研究会員の中には、毛皮(ムートン)づくりを行う人もいるなど、関わり方は多様。「羊と雲の丘」の広い放牧地を見渡すたび、さらなる可能性を信じたくなる。
しむら・ふみえ
1965年、札幌市生まれ。北海道女子短大(現北翔短大)卒。在学中は舞台活動向けの衣装や小道具作りを行い、羊毛染織にも役立つ経験を積む。88年に結婚、92年に夫の実家のある士別に転居。2002年、くるるん会入会。18年から士別サフォーク研究会会長。
(2022年5月23日掲載)
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