北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


アフリカ水槽の魅力*命はかない昆虫 奥深く

 小さな水槽が並ぶ「かば館」1階で、マダガスカルゴキブリやアフリカウシガエルなどを飼育しています。「アフリカ水槽」と名付け、昨年4月から、新たな生物・ウガンデンシスオオツノカナブンの展示に挑戦しています。とても長い名前ですよね。「ウガンダに生息する大きな角を持つカナブン」という意味です。

 ユーラシア大陸やアメリカ大陸には大型のカブトムシが生息していますが、なぜかアフリカ大陸にはカブトムシが少なく、カナブンやハナムグリの仲間が大型化しています。成虫の体色は茶色や紺色だったり、日本のカナブンのようなメタリックグリーンだったりします。

 生態はカブトムシと似ており、幼虫は土に潜って腐葉土などを食べ、成虫になると樹液や果実の汁を吸います。動物園では幼虫にカブトムシ用の昆虫マット(おがくずや土を混ぜたもの)、成虫には昆虫ゼリーを与えています。

 卵→幼虫→さなぎ→成虫と劇的に姿を変え、寿命を迎えるまで約1年。成虫以外はほとんど地中で生活するので、来園者に展示できるのは成虫期間の数カ月だけ。昨年4月に導入したペアは死んでしまいましたが、その幼虫たちが今年5月に羽化を始めており、成虫の展示を再開できそうです。昨年10月に導入したペアの繁殖にも成功し、幼虫たちが成虫になるのは今年の秋から冬ごろでしょうか。

 このように異なる成長サイクルの個体群を飼育することで、成虫を展示できる期間を長くし、できるだけ長く来園者に観察してもらえるように工夫しています。将来的には、さなぎから成虫へ羽化する様子も展示したいと考えています。

 昆虫は哺乳類や鳥類より、ずっとはかない命です。でも彼らは人類誕生のはるか以前から繁栄し、生態系を支えてきました。そんな昆虫たちを累代飼育し、魅力的に展示しようと考えると、哺乳類の飼育より奥が深いとも言えます。担当者の私自身、まだまだ昆虫について勉強中ですが、来園の際はアフリカ水槽の小さな生き物たちもご覧ください。(アフリカ水槽、ホッキョクグマ担当 大西敏文)

 

【写真説明】アフリカ水槽で展示しているウガンデンシスオオツノカナブン
(2022年5月23日掲載)

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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