北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


川崎正紀(留萌・飲食業)*別れの季節

 春は別れの季節。先日、1人の男が留萌を離れた。その男とは同い年で、何かと一緒に活動することが多かった。同じクラスにいたら、友達にはなっていないだろう。ずっと顔を合わせていながら、留萌を離れることには触れずにいた。

 50歳のその男が、新しいことにチャレンジするという。ものすごく尊敬する。もし帰ってくる時は、小奇麗なパーカを着て、彼女でも連れてきてほしい。

 長年この地域で頑張ってくれた医者夫婦も留萌を離れる。酒好き妻と下戸の旦那。この夫婦は十数年前、留萌で出会い、恋をして結婚し、2人の子どもも生まれた。

 大抵、地元の人は留萌を良く言わない。ここには何もない、テレビに映るのは暴風雪の時だけ、除雪が悪い。あそこの病院は駄目だ、赤字ならつぶせ。そう言われながらも、この夫婦はずっと頑張ってきた。この夫婦に命を救われた人はどれだけいるのだろう。地域医療がどうとか、田舎の病院だからとか、そんなことより、この2人がどれだけ地域に貢献してくれたことか。本当にありがとう!

 焼き鳥屋を始めて20年がたとうとしている。だが、毎年この時期はつらい。ましてこのコロナ禍で、きちんとお別れもできない。でも私はいつまでも、煙の向こう側の小汚いカウンターで待っているから。

 

(2022年3月28日掲載)

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


GO TOP