北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


エゾクロテン 繁殖へ同居*成功すれば春にも赤ちゃん

 くりっとした目が愛らしい。エゾクロテンは道北や道東、道央の森林にすむ北海道の固有種だ。体長は尾を含めて約40~50センチ。丸くなって眠ったり、勢いよく駆け回ったりして、来園者の人気を集める。

 明治時代には毛皮を目当てに乱獲され、一時は絶滅が心配された。今ではエゾクロテンの他に、道外から人為的に持ち込まれた「国内外来種」のホンドテンも、道内の一部に定着する。

 旭山動物園のエゾクロテンは3匹。このうち園内の「ゆっくりロード」の展示施設にいるのは雄と雌で、名前はない。野生で保護されたため、何歳かは不明だが、担当飼育員の佐藤和加子さん(40)は「高齢の域には達していない」とみており、今年から繁殖に乗り出した。

 エゾクロテンは単独で生活することが多く、展示施設の部屋は雄と雌に一つずつある。壁には30センチ四方の窓があり、鉄板でふさがれているが、外せば往来は自由。佐藤さんは、交尾期の6月ごろには「互いに存在を認め合う関係になっていてほしい」と願い、今年3月から1日数時間、鉄板を外し始めた。

 当初は雄が雌の部屋に入ると、雌が「ウー」とうなって逃げたが、1カ月もすると落ち着いた。「相性は悪くない」。見守っていた佐藤さんも安心した。

 鉄板を外す時間を徐々に長くし、交尾期までには互いの部屋を、常に行き来できる状態に。2匹は一定の距離を保ちながらも、同じ部屋のお気に入りの場所で過ごすようになった。

 交尾期、佐藤さんはビデオカメラで2匹を観察したが、小型動物のため、交尾の有無は、はっきり分からなかった。交尾した場合でも、エゾクロテンはすぐには妊娠しない。受精卵を数カ月間、着床させず、体内に保つ性質がある。うまくいっていれば、来年2~3月に着床し、4~5月には出産の見通しだ。

 「再び数が減った時に備え、どのように繁殖させるか、知っておく必要がある。同居がうまくいってよかった」。佐藤さんはその意義を強調し、繁殖の成功を祈る。赤ちゃんの誕生が、待ち遠しい。(望月悠希)


【写真説明】繁殖に向けて同居生活を続けているエゾクロテン(西野正史撮影)
(2021年8月22日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


GO TOP