旭山動物園わくわく日記
全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら
エゾモモンガ*「昼夜逆転」で観察しやすく
「思っていたより小さいね」「かわいい」。大きな目のエゾモモンガが姿を見せ、枝の上を駆け回ると、来園者から歓声が上がった。
いずれも雌の「おはぎ」と「べに」の2匹が暮らすエゾモモンガ舎は、4月29日の夏季営業開始と同時にオープンした。夜行性のエゾモモンガを開園時間中に観察できるよう、園内初の「昼夜逆転施設」となっており、夜の舎内を太陽光に近い紫外線を含む光で明るくし、昼間は照明を落としている。
エゾモモンガは、島しょ部を除く道内のほぼ全域に生息し、実は身近にいる動物だ。ただ、夜行性のため、出合えるチャンスは少ない。園内でも飼育してきたが、昼間はほとんど姿を見せず、飼育担当の中野奈央也さん(33)は「見ることができればラッキーな状況だった」と振り返る。昼夜逆転は「近くて遠い」エゾモモンガと、つながってもらうための試みだ。
舎内では巣箱などの配置も工夫されている。以前の小屋に比べて10倍広くなったことで、餌を置く場所を巣箱から4・5メートル離し、間に5、6本の木を立てかけた。エゾモモンガが餌を食べに行く際、木から木へ飛び移る様子が観察できるようにした。「おはぎ」も「べに」も新しい環境に慣れてきて、開園時間に巣箱の外に出ることが多くなり、飛膜を広げて滑空する姿を見せてくれることもある。
つぶらな瞳で愛らしい姿ばかりに目が行きがちだが、中野さんは「『かわいい』のその先も知るきっかけにしてほしい」と話す。大きな目は、夜間、小さな光も逃さずに捉えるため、滑空は、地面に降りずに素早く移動してエネルギーの消費を抑えるためといい、手書きの看板でこうした生態も伝える。
旭山動物園ではエゾシカやキタキツネ、エゾタヌキなど、北海道の生き物の展示に力を入れており、エゾモモンガ舎もその一環だ。坂東元(げん)園長は「身近な動物たちに目を向けることで、私たちを取り巻く自然や環境の問題を、自分たちのこととして捉えるきっかけにしてほしい」と願う。(望月悠希)
【写真説明】愛らしい姿を見せるエゾモモンガ。ほとんどを木の上で過ごし、地面に降りることは少ない(西野正史撮影)
(2021年7月19日掲載)
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