北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


シンリンオオカミ*非公開の2頭 再び一緒に

 旭山動物園で暮らすシンリンオオカミは、展示されている3頭の群れの他に、非公開のバックヤードで飼育されているヌプリとアオイの2頭がいます。

 ヌプリは昨年死んだケンの息子です。ケンは群れを力で押さえつけるのではなく、それぞれを認めて和を保つような、みんなに慕われるリーダーでした。そんな背中を見て育ったヌプリの元に、パートナーとしてやってきたのがアオイでした。アオイは他のオオカミを怖がるため1頭で飼育されていましたが、穏やかな性格のヌプリに安心し、ペアリングが成功しました。

 しかし、旭山動物園に来た年、アオイはもう10歳で妊娠の経験もありませんでした。飼育下で出産したオオカミの最高年齢は11歳と言われており、妊娠は難しいと知りながらも、「奇跡が起こるかも」とワクワクしながら見守っていました。

 2頭はいつも並んで寝ていることが多く、先に起きたヌプリが何度もアオイを起こそうとしたり、産室でアオイが寝ているとヌプリがやってきて、アオイがスペースを空けて一緒に寝たりと、たくさんのほほ笑ましいエピソードがあります。昨年からは交尾も確認していました。

 ところが、今年の繁殖期が終わりかけた頃、アオイに子宮蓄膿(ちくのう)症が見つかりました。すぐに子宮摘出手術を行い、入院・隔離となりました。アオイをヌプリがいる獣舎に戻したのは手術から17日も後です。

 このため、アオイを戻す際はまず部屋を二つに仕切って対面させ、慣れた頃、仕切りを開けました。するとヌプリはすっとアオイのそばを通り過ぎ、お互いが以前いた場所のニオイを嗅いだり、おしっこをかけたりしていました。その後、何げなくアオイの元に行き、顔をなめました。

 アオイが出産することはもうありません。でも、2頭でこれからも長く良い日々を過ごしていけるよう、飼育員として、できるだけのことをやっていきたいと思っています。

(シンリンオオカミ担当 原田佳)

 
【写真説明】シンリンオオカミのヌプリ(左)とアオイ
(2021年6月6日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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