北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


飼育員の手作り看板*命伝える精神を受け継ぐ


 
 園内では29日の夏季開園を前に、動物の生態を伝える看板制作が進んでいる。飼育員の手作りで、約30年前、経費削減を理由に廃材を使って始めたのがきっかけ。春の休園期間に毎年リニューアルしている。味のある文字と絵には、知識と愛情が詰め込まれ、この春もユニークな看板が園内を彩りそうだ。
 エゾフクロウの展示場では15日、飼育員2年目の荒木地真美さん(23)が看板を作っていた。色とりどりのペンを使い、フクロウの首が270度回転する秘密や、人間の目との違いを文章と絵で木の板に書いていく。他のフクロウ4種との違いも分かるよう、それぞれの羽の実物も貼った。
 お手本は坂東元(げん)園長が若手時代に作った看板と、市内の絵本作家あべ弘士さんが同園の飼育員だった25年前に残したエゾフクロウの生態の説明書きだ。「坂東さんの細かすぎる文章も勉強になるし、あべさんの絵と文は初心者にも分かりやすい」と荒木地さん。3週間かけて数枚の看板を作る。
 「手作り看板は『金がない』から生まれた」と坂東園長は振り返る。約30年前、あべさんがブリキの板やリンゴの箱を使って作り始めると、来園者は印刷よりも手書きの看板を読んだ。坂東園長自身も、水中で動かないアザラシを見た来園者から「死んでいるんじゃないか」とよく呼び出され、「いったい何分息を止めていられるのでしょう?」と書いた看板と時計を置くと、子どもたちが面白がった。
 2004年頃からは、動物の死を知らせる看板も置き、心不全、群れの中での闘争といった死因も説明した。当時、動物園で死に触れるのはタブー視されていたが、坂東園長は「生まれて死ぬのは当たり前。動物の最期を見て、命について考えてほしい」と話す。
 レッサーパンダの展示場では毎朝のフンを「生うんち」と紹介、えさによるにおいの変化を触りながら確かめられる。ぺんぎん館では、フンボルトペンギンが卵の中でヒナの形に成育する過程を、標本を並べて文章とともに説明する。荒木地さんはそんな先輩の看板を参考に、自分なりの文章で動物への思いを書く。命を伝える精神が、受け継がれている。(若林彩)
 

【写真説明】カラフルなペンで、エゾフクロウの説明を木の板に書く飼育員2年目の荒木地さん(西野正史撮影)
   
(2021年4月19日掲載)
 
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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