旭山動物園わくわく日記
全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら
ゴマフアザラシの死*忘れられぬ豪快ジャンプ
あざらし館で飼育していたゴマフアザラシの雌(推定20歳)の「カムイ」が2月18日、死亡しました。カムイは妊娠して3月末に出産予定でしたが、流産し、その過程で子宮捻転(子宮が途中でねじれる)を起こしたことによるショック死(急性循環不全)でした。
カムイは2000年、道東で保護された野生個体です。釧路動物園で飼育されていましたが、同年6月、旭山動物園に来園しました。当時のカムイは野生個体ゆえか、何に対しても警戒心が強く、なかなか心を開いてくれませんでした。「ぺんぎん館」が建設され、ペンギンと同居させてみることになりましたが、まだかたくなだった彼女はペンギンの足をかんだり、飼育員の手をかんだりとトラブルが続いたため、同居は短期間で断念しました。その後、アザラシの仲間たちと合流させ、その中に入ると、カムイは徐々に慣れ、落ち着いていきました。
そんな中、今度はあざらし館の建設です。アザラシたちは、いったん旧ホッキョクグマ舎に引っ越し、あざらし館が完成すると、オープン前、また引っ越して現在に至ったわけです。
あざらし館でのカムイの動きはとてもアグレッシブでした。ある日、飼育員がプール際でエサのホッケをブラブラさせていると、カムイは水中から飛び上がって食いつきました。館内から確認すると、一度水底まで潜り、勢いをつけてから水面にジャンプしていました。あの時のカムイの全身の躍動は今も忘れません。「これを来園者に見せよう!」となり、一時期、「アザラシのジャンプ」として展示していました。覚えている方、いらっしゃいますか。あの時、水面から豪快にジャンプしていたのがカムイなんです。晩年のカムイは水面を激しくたたき、エサをねだる姿でお客さんを楽しませてくれていました。
カムイは生涯、7回出産し、3頭は成育しましたが、うち2頭は人工哺育、1頭が自然哺育でした。他は死産や流産、子の事故死と、繁殖に関しては安心できない個体でした。このため今回の8度目の出産に期待していたので、本当に残念でなりません。
「カムイ、思い出いっぱいありがとう。安らかに」
(あざらし館担当 中田真一)
(2021年4月4日掲載)
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