旭山動物園わくわく日記
全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら
インドクジャクのひな*母親のまね けなげな姿
クジャク舎で8月、インドクジャクのひな1羽が生まれた。ひなは、ゆったりと歩く母親の後ろを小さな歩幅でとことこ追いかけ、自分の体長より高い段差があると翼を広げ、ジャンプして跳び越える。母親のまねをしてえさを食べたり、羽を繕ったりと、けなげな姿が来園者のハートをつかんでいる。
繁殖期は夏で、今年も7月から雌9羽のうち複数が、巣箱に5~6個の卵を産んだ。ふ化するまでの約1カ月間、雌は他の個体の卵も含め、交代で卵に寄り添い、温める。飼育担当の佐賀真一さんも「巣箱を離れたのを見たことがないくらい一生懸命だった」といい、8月12日にかえったのがこの1羽だった。
自然に繁殖するようになったのは、2015年度に現在のクジャク舎ができてからだ。展示スペースの大きさは幅20メートル、高さと奥行きが各5メートル。特に高さは以前の約2倍になり、クジャクが木の枝から枝に、高く跳躍する姿が見られるようになった。のびのび過ごせる環境が子育てにも好影響を与えたのか、それまで産卵後に飼育員が機械を使って温め、人工的にふ化させていたのが、雌が自ら温めるようになったという。
今季は巣箱に屋根を付け、わらを敷き詰めて環境を改善。来園者がより近くで見られるよう巣箱を通路側に近づけた。無事成長したのは昨季も1羽だっただけに、佐賀さんは「もっと多くの卵がかえると思っていたから、少し残念。来季は巣箱の数を増やしてみようかな」と試行錯誤はしばらく続きそうだ。
ひなは生後、手のひらに納まるほどの大きさだったが、現在は体長20センチに成長。インドクジャクのひなは他の鳥類に比べて成長が遅く、大人と同じ大きさになるまで1年かかるという。
母親はひなのピーピーと高い鳴き声に反応し、どこにいても駆けつける。一方、父親はというと、繁殖期が終わり、雌にアピールする色鮮やかな飾り羽も抜け、子育てには一切参加しない。飾り羽のない珍しい姿を見られるのも今だけだ。夏季開園が終わる11月3日まで展示している。(若林彩)
【写真説明】つぶらな瞳で母親を見つめるインドクジャクのひな(宮永春希撮影)
(2020年10月4日掲載)
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