北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


エゾシカ肉*捨てるのではなく資源に

 旭山動物園は人と自然が共に暮らす未来のためにさまざまな取り組みを行っています。動物を見てもらい、楽しく知ってもらうのはその一つ。ガイドやイベント、「どうぶつ看板」の作成なども積極的に行っています。どうぶつ看板は印刷するより手書きの方が人間味が出て、立ち止まって読んでもらえると考え、すべての動物舎で担当者が一生懸命に手書きしています。
 今年、私が担当しているエゾシカの森に看板を設置しました。タイトルは「ゴミにしますか? 命をいただきますか?」。なかなか刺激的なタイトルです。立ち止まって読んでもらいたく、頭を絞ってこのタイトルにしました。
 道内では現在、農作物被害を防ぐために年間10万頭以上のエゾシカが駆除されています。そのエゾシカの多くは廃棄物、ごみとして処理されています。
 看板は北海道の大自然が育んだ命をごみにしている現状を知ってもらう内容です。さらにもう一歩進めて、動物園で「エゾシカ肉を食べてみませんか?」と、お勧めすることにしました。
 園内の一部食堂ではエゾシカ肉の料理を提供しています。「エゾシカ肉を食べる」という選択は、ごみにするのではなく資源として活用する一つの選択肢です。肉を食べるという行動自体は小さなアクションかもしれません。しかし、その一歩を踏み出す人が増えれば、人と自然が共に暮らす未来に近づくはずです。動物園がそのような体験を提供する場所としての役割を果たせるのではないかと思い、看板にしました。
 人と自然の関わりが非常に難しい時代になっています。ただ、折り合いをつけて共に暮らす方法は人間が考えるべきことです。その一つの答えである「命をいただく」体験をしに動物園に来てみませんか?
(エゾシカの森担当 鈴木悠太)

【写真説明】新たにエゾシカの森に立てた看板。来園者にエゾシカ肉を食べる体験を勧める

(2020年7月5日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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