北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


飼育、繁殖技術とは*生態の知識生かし環境整備


レッサーパンダの生まれたばかりの赤ちゃん

 新年度が始まり、就職や部署を異動する方も多いと思います。旭山動物園でもこの春から2人の新人飼育係がやってきます。2人は旭川市役所の研修が終わってから動物園で働き始めます。今から楽しみです。

 さて、皆さんは新人飼育係とベテラン飼育係では何が違うと思いますか。例えば家具職人では木材の加工や組み立て技術が違ってきますよね。実は飼育係にも「飼育技術」という言葉があります。では、飼育技術とは一体何でしょう。掃除の奇麗さ? 野菜の切り方が早いとか?

 私も最近まで、この言葉をうまく説明できなかったのですが、今のところは「動物の生態などの知識を持ち、日々の観察の中でその知識を生かして適切に飼育環境を整えること」と考えています。飼育技術の中には繁殖技術という言葉もあります。例えば「爬虫(はちゅう)類の繁殖技術はM動物園のH飼育係が一番!」などと使います。

 もちろん繁殖は、動物次第の部分が80%くらいあるのですが、ペアリングのタイミングを考えたり、産む環境を整えたりすることによって残りの20%を埋めるのが飼育係の担う部分になります。そして、1回その動物が繁殖したからといって繁殖技術が確立されたわけではありません。個人的には二つの条件があると考えていて、一つは同じ動物でも2ペア以上(違う組み合わせ)で繁殖成功するということです。手前みそですが、私が1年前まで担当していたレッサーパンダは2ペアで合わせて6回繁殖に成功しました。

 そして、もう一つですが、違う担当者になっても同じように繁殖するということです。人に伝わるように技術を言語化することは大事です。レッサーパンダは後輩飼育係に引き継ぎましたが、今年新たにやってきた雄のプーアルと雌の渝渝(ユーユー)の間に2月末から交尾が確認できたようです。プーアルがやってきたのは繁殖期に入った同月だったのですが、うまくペアリングを間に合わせてくれました。

 妊娠していれば6月中旬くらいの出産になる予定です。無事に繁殖が成功することを一緒に楽しみにしています。(獣医師・元レッサーパンダ担当 中村亮平)

(2020年4月5日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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