北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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日曜談話室

脚光を浴びている時の人、この道ひとすじのいぶし銀の人、挑戦を続けるフレッシュな人…。旭川、道北には魅力的な人がいっぱいです。そうした人間群像にスポットを当てています。 2020年3月までの記事はこちら


高井早苗さん(70)*稚内で合唱を指導する

*老若男女 音楽学べる場を提供*歌は元気の源 魅力伝えたい

日曜談話室

 【稚内】稚内市内の子ども合唱団「エンジェルボイス」や利尻の「コーラス島の音」など音楽サークル3団体を指導する高井早苗さん(70)。元教員で老若男女に歌の魅力を伝え続けている。高井さんに歌への思いを聞いた。(聞き手・稚内支局 伊藤駿、写真も)

 ――音楽の指導に当たるきっかけは。

 「稚内小(現稚内中央小)3年のときに、担任が作った鼓笛隊に参加し、音楽のとりこになりました。クラスが一つになれる音楽って素晴らしいなって感じました。中学、高校で合唱部に所属し、東京の音楽専門学校に通いました。大学に行きたかったのですが、父の体調が悪く、稚内に戻りました。その際、恩師に『田舎の子は間違った音楽教育を受けている。音楽を学ぶ環境をつくってあげてほしい』と言われました。この言葉が原点です」

 ――エンジェルボイスを2003年に結成しました。

 「稚内に戻り、稚内中央小で音楽専科の教員として10年間勤務しました。子どもとNHK全国学校音楽コンクールの全国大会出場を目指しましたが、その夢はかないませんでした。家庭の事情で教員を辞めることになり、子どもと泣いて別れました。稚内でも音楽を学べる場を提供し、合唱の素晴らしさをもう一度伝えたいと思ったのです」

 ――創作ミュージカルにも挑戦しています。

 「ミュージカルは歌と踊り、演技を全てこなす総合芸術です。歌やセリフを覚えて、役になりきるのは子どもにとってハードルが高い。公演前の9月から12月までの土日は朝からびっしり練習します。子どもは苦しんだり、泣いたりしながら成長しています」

 ――本当に歌が好きなんですね。

 「合唱に打ち込んだ50年間でした。歌は子どもから年配の人まで、障害があっても、喜びや感動を共有できる平等な世界です。専門性や楽器が無くても人間の持っている声だけでハーモニーを楽しめます。伸び伸びと歌う子や恥ずかしがる子。子どもの表情と声の力にも魅力を感じています」

 ――利尻町でも合唱の指導をしています。

 「教員だった夫の転勤で1998年から3年間、利尻町で暮らしました。最初の年に稚内の第九のコンサートで指導を任され、参加した町民と、『コーラス島の音』を結成しました。みなさん、自然の中で生活しているためか、美意識の素晴らしさや感性の豊かさを感じています」

 ――夢はありますか。

 「次の世代にバトンタッチするため、指導者を養成することです。私がいなくなってつぶれるようでは意味がありません。でも、もう一回ミュージカルがやりたいですね。歌は元気の源。人口減で寂しくなっている稚内を明るくしたい」

*取材後記
 高井さんを初めて取材したのは2018年、エンジェルボイスの練習。はつらつと歌への情熱を口にする姿が印象的だった。その根底にあるのは何か、気になっていた。高井さんの名刺には「うたごえで明るい街づくりを」と書かれている。過去3回のミュージカルのうち、2回は稚内をテーマにしたものだった。子どもたちに故郷を好きになってほしいという思いが伝わってきた。


たかい・さなえ
1949年、稚内市生まれ。稚内中央小の教員を退職後、混声合唱団「稚内フラウエンコール」で20年間合唱の指導を行う。現在は40~80代の合唱サークル「あじさいコーラス」の常任指揮者、稚内養護学校で特別支援員として音楽を教える。

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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