北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


塩田志女子(旭川道新エッセー教室受講生)*ものうり

 来客を告げるブザーが鳴った。「誰かしら」とつぶやき応答ボタンを押した。

 「どなたですか?」「新しい掃除用品を持ってきました。ご覧下さい」

 若い女性の声だ。言葉遣いも丁寧である。少し見たい心が動いたが、断った。

 「珍しい品もいろいろございます。ちょっと玄関までお越し下さい」。彼女の「玄関まで」の言葉に嫌な感じがした。

 「お断り致します」と告げ、インターホンのスイッチを切った。その後2度、ブザーが鳴り響いた。

 トラブルの話も聞く訪問販売だが、私の子供の頃は行商のおじさん、おばさんと呼んでいた。浜から魚を売りに来るおばさん、自転車に野菜をいっぱい載せた農家のお姉さん―。

 行商人たちは各家の裏口から声をかけ、小さな空き地に品物を並べる。だれ言うとなく近所の主婦がざるや籠を手に集まってくる。「今日の魚は」「安くしてね」。売り手も買い手も言葉を交わし、楽しそうだ。

 小間物屋のおじさんは、いつも大きな風呂敷を広げる。糸や針、ゴムひも、ボタンなどごちゃごちゃに入っているが、おじさんが手を添えると奇麗に並ぶ。小間物屋は魔法の手の持ち主だった。

 行商人や子供も交え、そこは主婦たちのささやかな社交の場であったのかもしれない。

(2024年09月30日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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