どうほく談話室
天塩町の自然写真家 柳谷明伸さん(72)
人間国宝・野村万作さんの狂言公演も実現*夕焼け、利尻望む絶景舞台
【天塩】町内在住の自然写真家、柳谷明伸さん(72)は、天塩町を中心に道北の風景や動物を撮影し、発信を続けている。札幌市から移り住み6年目。2年前には人間国宝の狂言師、野村万作さんの初の天塩公演を実現させた。道北の魅力や写真への思いを聞いた。
―天塩町を移住先に選んだ理由は。
「自然写真を本格的に撮影しようと、札幌市からの移住を考え、3カ所の候補地が頭に浮かびました。父が生まれた礼文島がある道北地区、中学時代まで過ごしたオホーツク管内清里町、母方のルーツの奈良県です。そんなとき留萌振興局主催の管内の市町村を巡る移住体験ツアーに参加しました。天塩町は初めて訪れましたが、天塩川河川公園から眺める利尻山や景観に感動し、2カ月後に移住しました」
―写真撮影を始めたきっかけは。
「15年前に趣味の能や狂言の公演を記録するために一眼レフカメラを購入したことです。そのうち、大好きな野鳥の撮影、例えばシャッター速度が速い高速撮影による野鳥の羽ばたきの撮影に魅了されました」
―天塩町や道北の魅力を教えてください。
「天塩川河川公園からは、一年を通じて晴天であれば利尻山に映える夕焼けを見ることができ、絶景です。冬でも河口が凍らないため、ホオジロガモなどのカモ類が春先まで見られ、それらを狙うオオワシ、オジロワシなど野生動物の弱肉強食の世界を撮影できます。天塩町の振老(ふらおい)沼はオオヒシクイやオオハクチョウなど数千羽の渡り鳥がやってくる中継地で、夕焼けの利尻山と渡り鳥が沼の水面に映った光景に感動しました」
―2年前には人間国宝の野村万作さんの天塩公演実現に奔走しました。
「中学時代に学校行事で見た狂言に感動しました。会社員時代に市民グループの役員として狂言公演に携わり、野村万作さんの小樽公演を手掛けたことがありました。お世話になっている天塩のみなさんに狂言を見てほしかった。子どもたちが伝統芸能に触れて心豊かな大人になってほしいとの思いもありました」
「天塩川河川公園からの夕焼けは本当に美しい。いつか夕焼けの時間帯に河川公園で能や狂言の公演をやりたいですね」
―写真家としての今後の目標は。
「ほぼ毎日、インスタグラムやフェイスブックで撮影した写真を紹介しています。引き続き道北の四季の自然や動物の魅力を発信するとともに、天塩町移住後に撮影した数万点の写真の中から選び抜いた作品による写真集の発行と写真展の開催を目指したい」
(聞き手・田中雅章)
*取材後記
「道北の雄大な自然の美しさにあらためて感動し、被写体の豊富さに驚き、夢中で撮影した」。天塩町に移り住んでからの生活を声を弾ませて語ってくれた。
フットワークの軽さが持ち味で、夏祭りなど日常のマチの素顔も記録しようと、天塩町や近郊でカメラを構える姿をよく目にする。移住者ならではの斬新な視点で、道北の風景や動物の魅力を伝える新たな作品を心待ちにしている。
やなぎや・あきのぶ 1952年、紋別市生まれ。小樽商科大卒業後、北海道中央バス(小樽)に入社し、札幌北営業所長などを歴任。退職後、千歳観光連盟嘱託職員を経て2019年11月に札幌市から天塩町に移り住んだ。写真道展に昨年まで3年連続で入選するなど各種コンテストで入賞。
(2025年02月03日掲載)
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