旭山動物園わくわく日記
全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら
「かば館」のテラピア*アフリカでの共生再現
カバの口からこぼれ落ちたカボチャや、ふんに混じる干し草をつつく魚たち―。旭山動物園は昨年9月から、「かば館」のプールでアフリカ原産の淡水魚テラピアを飼育している。実際の生息環境を再現するための工夫で、飼育担当の鈴木達也さん(32)は「動物園では大きな動物に目がいきがちだが、小さな生き物と影響し合いながら共に生きていることを知ってほしい」と話す。
プールでは現在、10~20センチほどの大きさのテラピア21匹を飼育する。カバの食べ残しやふん、古い皮膚などを食べるため、まだ一度も餌を与えていないが、問題なく過ごしているという。
旭川市内のため池などでも繁殖しているが、外部から持ち込まれた外来種にあたるため、駆除を兼ねて同園の飼育員が市内で釣り、その個体を同館で展示している。
かば館ではもともと、生態系での役割などを学んでもらおうと、アフリカでカバとともに暮らすゴキブリやヤスデを展示してきた。テラピアの飼育もその一環で、館内にはカバとの関係性を説明するパネルも設置した。
来園者からは「カバの餌なんじゃない?」との声も聞こえてくるが、草食のカバが魚に危害を加えることはない。同園ではまだ距離があるが、野生下ではテラピアが直接カバの体をつついて古い皮膚を食べることもあり、体をきれいにするのにも一役買っている。プールでは水質をきれいに保つため塩素が欠かせないが、魚には悪影響を及ぼすため、濃度調整の難しさがあるという。
鈴木さんは、個体数が増えればテラピアの行動がもっと大胆になるのではないかと期待する。「カバが排せつするとすぐにテラピアが群がるような、自然本来の状態を目指したい」と意欲をみせる。(葉柴陵晴)
【写真説明】プールの中で、カバと共生しているテラピア(熊谷洸太撮影)
(2025年02月03日掲載)
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