旭山動物園わくわく日記
全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら
グロテスクな小動物たち*意外と繊細 難しい繁殖
【写真説明】オオヤスデの幼体たち
私の担当動物、ホッキョクグマは年末に出産の可能性があるため、出産する部屋の準備をしています。絶滅危惧種の彼らを飼育下繁殖させることは重要です。
私の担当はもうひとつあります。それは「アフリカ水槽」! かば館地下の小さな水槽で、イベリアトゲイモリやオオヤスデなどを飼育しています。
決してホッキョクグマほどの注目を浴びない彼ら。マダガスカルゴキブリの水槽前では、来園者の悲鳴が聞こえてくることもしばしばです。
アフリカに生息するカバやキリンの大量のフンや巨大な死骸は、大地に棲(す)む小動物たちが分解して土へ還(かえ)しているのです。そして豊かになった大地からまた植物が育ち、大型草食獣の糧になります。
一見グロテスクな小動物たちにも生態系における役割があり、全ての生物は繫(つな)がっているのです。そうしたメッセージを伝えるためにアフリカ水槽があります。
一般の方から見ればホッキョクグマは希少で来園者から人気がある動物、アフリカ水槽の動物たちはグロテスクで来園者から悲鳴があがる動物です。でも担当者はそうした人間の価値観にとらわれず、全ての動物を同じ熱量で飼育することが大事だと思っています。
アフリカ水槽の動物たちも繁殖に力を入れています。小動物は環境変化に弱いため、繁殖は意外と難しいのです。現在、オオヤスデの幼体たちが元気に育っています。まだ小さいため非展示ですが、もう少し成長したら展示に出すことができるでしょう。
「一寸の虫にも五分の魂」という諺(ことわざ)がありますが、「いやホッキョクグマもヤスデも同じ十割の価値だ!」という気持ちで、しっかり繁殖させたいと思っています。
(ほっきょくぐま館・アフリカ水槽担当 大西敏文)
【写真説明】かば館内にある「アフリカ水槽」
(2024年12月02日掲載)
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