北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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今週の一枚


<パリ五輪2024>女子やり投げ 日本陸上の歴史塗り替え*はるかに輝く金メダル

全国からファン 喜び分かつ*地元・旭川でPV 勇姿見届け

 やり投げの「女王」はパリで最高の放物線を描き、またも日本陸上の歴史を塗り替えた-。パリ五輪陸上女子やり投げで、北口榛花選手(26)が日本女子のトラック・フィールド種目で史上初の金メダルを獲得した8月11日、パブリックビューイングが行われた出身地の旭川は、興奮の渦に包まれた。

 旭川市役所1階の特設会場には、未明の時間帯にもかかわらず、当初見込みの200人を大幅に上回る約400人が来場。急きょ2階も開放された。

 参加者は、赤いスティックバルーンを手に、大型モニターに映し出される北口選手の姿を固唾(かたず)をのんで見守り、北口選手の金メダル獲得が決定すると、涙ぐむ人も。歓声と拍手が会場に響きわたった。

 北口選手の母校、旭川東高の生徒や卒業生も大勢集まり、気を引き締めるという意味の同校の標語「シマレ ガンバレ」と書かれたはちまきを巻いて応援。同校陸上部で2年の渡辺一休さん(16)は「めっちゃシマってた。笑顔のイメージが強いけど、(優勝時に涙を見せたのは)応援してくれた市民の顔が浮かんで胸がいっぱいだったのかな」と思いをはせた。

 会場には大阪や富山、帯広などから駆けつけたファンもおり、人気の高さをうかがわせた。吉本興業所属で、吉本新喜劇などの舞台に立つ芸人、ぢゃいこさん(43)は知り合いから北口選手に似ていると言われ、動画を見ているうちにすっかりとりこに。大阪から自費で旭川入りし、北口選手の服装や髪形をまねて観戦した。「旭川のみんなと一緒に喜びを分かち合えて良かった」と感極まった様子だった。(東桜子、後藤耕作、和泉優大)
 

*「お疲れさま」/「誇らしい」*恩師、同級生から祝福の声

 北口榛花選手の恩師や同級生からは祝福の声が相次いだ。

 北口選手に小学3年から高校1年まで7年間、水泳を指導したコナミスポーツクラブ旭川コーチの佐藤淳さん(62)は、自宅のテレビ前で勝負の行方を見守り、金メダルが決まると感極まって涙を流した。

 高校入学後、水泳と陸上の両立が難しくなり、やり投げに専念することを北口選手に薦めたという佐藤さん。「あのときの選択は間違っていなかった」と当時を振り返った。

 笑顔がトレードマークの北口選手が金メダルが決まって最初に見せた表情は、涙。「東京五輪からの3年間は辛いこともあったはず。うれしさの他にも、ほっとした思いや両親への感謝などいろんな感情が入り交じったのだろう。お疲れさまと声をかけたい」とねぎらった。

 旭川東高2、3年の時の担任をしていた膳亀奈美枝さん(54)=現札幌北高教諭=は、高校時代から描いていた夢を実現したことに感動し「進学校を卒業してスポーツの世界で活躍する姿は、北海道の高校生に刺激を与えたのでは」と話した。

 旭川東高時代の同級生で、東大大学院の田中駿介さん(27)は、高校1年の時に「大物になるかも」と感じて北口選手に書いてもらったサイン色紙を大切に飾っている。照れくさそうにしながらもためらいなくサインを書いてくれた姿に「この道を極めるんだという自信と決意があった」と懐かしそうに振り返った。

 同じく同級生で、名寄市の団体職員森和季さん(26)は正月休みでも真剣に筋トレする北口選手の姿が印象に残っているという。「ポテンシャルを最大限に生かす努力を欠かさなかった。同級生として誇らしい」と話した。(東桜子)
 
【写真説明】北口選手の金メダルが決まり、感激の涙や笑顔であふれた旭川市役所のパブリックビューイング会場=11日午前3時50分(伊丹恒撮影)
(2024年08月12日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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